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骨太の方針2025を踏まえ、
司法修習「谷間世代」への早急な是正措置を求める理事長声明

司法は、この国の三権の一翼であり、法の支配を実現して国民の権利を守るための社会的インフラである。そのため、国の責任において整備されなければならない。

司法修習は、司法の担い手の養成制度であり、司法試験に合格して最高裁判所に「司法修習生」として採用された者が、裁判所、検察庁及び法律事務所等でのOJTを経ることで、司法を担うことの責任を自覚し、実務法曹として十分活動できるだけの知識と実践力を備えるための制度である。約1年という司法修習期間で実務法曹としての素養を身に着けさせるべく、最高裁判所は司法修習生に「修習専念義務」を課し、原則として兼業・兼職を禁止している。そのため、司法修習生には、終戦直後の1947年(昭和22年)から60年以上にわたり、公務員に準じた給与を支払う給費制が採られていた。

しかしながら、司法制度改革における司法試験合格者3000人構想を前提に、2011年(平成23年)11月に給費制が廃止され、同年に司法修習を開始した新第65期司法修習生より司法修習は無給となり、最高裁判所が申請者に司法修習期間中の生活費を貸し付ける「貸与制」が導入された(なお、この頃の司法試験合格者は約2000人であり、2014年及び2015年は約1800人、2016年以降は約1500人であり、給費制廃止の前提が崩れている。)。

そのわずか6年後、全国各地で行われた給費制復活を求める活動を成果が結実し、2017年(平成29年)4月19日に裁判所法が改正されて修習給付金制度が創設され、第71期以降の司法修習生に対しては修習給付金が支給されるようになった。 しかし、制度変更の谷間に陥った新第65期から第70期までの司法修習修了者(以下「谷間世代」という。)には遡及適用されず、現在まで谷間世代への是正措置は設けられていない。

当連合会管内(愛知県、三重、岐阜県、福井、金沢、富山県の弁護士会)には弁護士が3030人いるところ、うち667名が谷間世代であり(本年9月15日時点)、全体の22パーセント、つまり5人に1人以上が谷間世代である。彼らは現在法曹となってから概ね8〜13年目であり、法曹として十分な経験を積み、これからの司法を支えるべき重要な立場にある。実際、多くの谷間世代が様々な分野で 活躍しており、石川県で令和6年元日に発生した能登半島地震の際にも、多くの谷間世代が無償での法的支援活動を行った。

他方で、谷間世代の当事者からは、貸与金返済による経済的負担のみならず、約1年にわたり無給という不合理な制度での司法修習を強いられ、他の世代とは異なる不公平な取扱を受けたことによる精神的影響があるとの声が上がっている。我々弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現するために日々活動しているのであり、谷間世代だけが取り残された不公平、不公正な状態を看過することは許されない。谷間世代の弁護士の経済的負担・不公平感の軽減によって谷間世代が力を発揮できることは、すべての人の利益につながる。

当連合会では、この問題に関して開催された2016年、2022年及び本年の「全国リレー市民集会 in 中部」を当連合会管内の弁護士会及び日本弁護士連合会と共催し(いずれも愛知県弁護士会主催)、2022年(令和4年)10月21日に開催された当連合会定期弁護士大会においては「司法修習「谷間世代」への一律給付を求めるとともに、修習給付金の増額を求める決議」をする等( https://www.chubenren.jp/news/r04_12_ketugi.html )、問題解決を強く訴えてきた。

その後も、日本弁護士連合会、全国の弁護士会等において、谷間世代への是正措置を求めて精力的な活動を継続してきた。

そうしたところ、この度、令和7年6月13日に閣議決定された政府の「経済財政運営と改革の基本方針2025」(いわゆる骨太の方針2025)34頁において、「法曹人材の確保等の人的・物的基盤の整備を進める」と記載され、その注記172において「公益的活動を担う若手・中堅法曹の活動領域の拡大に向けた必要な支援の検討を含む。」と明記されるに至った。

そこで、当連合会は、谷間世代への是正措置により経済的負担・不公平感を軽減することでより充実した司法を実現すべく引き続き尽力することを表明するとともに、国及び関係機関に対し、上記骨太の方針2025を踏まえ、谷間世代の解消へ向けた是正措置として、修習給付金と同額の一律給付又は実質的に「谷間」が解消されるような基金制度の創設といった具体的措置が早急に実現されることを強く求める。





                                2025年(令和7年) 10月22日

中部弁護士会連合会 理事長   菊 賢一

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