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司法修習「谷間世代」への一律給付を求めるとともに、
修習給付金の増額を求める決議

司法は、この国の三権の一翼である。そして、司法修習制度は、国が司法修習生に、司法を担うことの責任を自覚させるとともに、法曹として十分活動できるだけの知識と実践力を備えさせるため、修習専念義務を課し兼業・兼職を禁止したうえで設けた重要な制度であり、司法試験に合格した者は、原則として司法修習を経なければ実務法曹となる資格を得ることができない。

わが国では、このような司法及び司法修習制度の重要性や修習専念義務を課すことなどに鑑み、物資が不足し経済的に決して豊かではなかった終戦直後の1947年から、司法修習生に対して公務員に準じた給与を支払う給費制が採用され、以後60年以上に亘ってこの制度が維持されてきた。しかしながら、2011年11月、司法制度改革の名のもとに、長きに亘って維持されてきた給費制が廃止されてしまった。

当連合会管内の弁護士会はもちろん、日本弁護士連合会及び各地の弁護士会は、司法は社会インフラにほかならず、司法を担う法曹の養成は国の責務であることから、国に対して給費制の復活を求め、様々な活動を行ってきた。そして、全国各地で行われた給費制復活を求める活動の成果が結実し、2017年に裁判所法が改正され、修習給付金制度が創設された。

しかしながら、2017年裁判所法改正時、2011年11月以降2016年までの間に司法修習生となった新第65期から第70期(いわゆる「谷間世代」)に対しては、なんらの是正措置が採られなかった。そのため、わずか6年の間に司法修習を行った谷間世代だけが、無給という不合理な制度での修習を強いられ、それによる経済的・精神的足かせを負ったままとなっており、その数は、全法曹の約4分の1(約1.1万人)に及ぶのである。

我々弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現するために日々活動しているのであり、谷間世代だけが取り残された不公平、不公正な状態を看過することは許されない。また、若手弁護士らが経済的・精神的足かせにより活動が阻害され、国民の権利の守護者としての役割が果たせない事態は、この国の司法のために何としても避けなければならない。

以上より、「谷間世代」を解消する事後的是正措置として、国から谷間世代に対する一律給付が必要である。

また、2017年に創設された修習給付金制度の月額は基本給付金13万5000円であり、従前の給費制の水準(大学院卒の公務員の給与に準じた額)には到底及んでいない。しかも、この額から税金(雑所得として課税対象である)、年金、健康保険料を支払うと、手元に残る金額は生活保護費相当額に満たない場合もある。このような額では、平日フルタイムで裁判所、検察庁、法律事務所及び司法研修所に通い、服装は基本的にスーツで、自身でノートパソコンや法律関連書籍を準備する等して約1年にわたり行う司法修習に専念するには、不十分と言わざるを得ない。 以上、そして先述した司法及び司法修習制度の重要性並びに修習専念義務に鑑み、修習給付金の額を従前の給費制相当額まで増額すべきである。

よって、当連合会は、以下のとおり決議する。


1 国に対し、司法修習期新第65期から第70期までのいわゆる「谷間世代」該当者へ、修習期間に相当する現行修習給付金相当額ないしそれ以上の金額を一律給付することを求める。

2 国に対し、現行の修習給付金の額を、2011年11月の給費制廃止前の水準まで増額することを求める。


以上


2022年(令和4年)10月21日

中部弁護士会連合会

提 案 理 由


第1 谷間世代への一律給付実現について

1 司法修習生の給費制をめぐる動き
−司法制度改革から修習給付金制度創設まで

(1)2010年からの給費制廃止決定(2004年改正裁判所法)

1999年7月に内閣に設置された司法制度改革審議会、その後の司法制度改革推進本部等においていわゆる「司法制度改革」が議論され、その中で司法試験の合格者を3000人程度まで大増員することが審議された。そして、司法試験合格者が3000人程度となることを前提に司法修習生の給費制を廃止し、申請者に最高裁判所が生活費を貸し付ける貸与制へ移行することが決まり、2004年、2010年11月以降に採用される司法修習生から給費制を廃止することを一内容とする改正裁判所法が成立した。


(2)給費制1年延長(2010年改正裁判所法)

司法修習生の給費制廃止が目前に迫った2010年、日本弁護士連合会及び各地の単位会、ビギナーズ・ネット、市民団体等が中心となり、司法の担い手を育てるのは国の責務であるとして、給費制を維持すべきとの運動が全国展開された。給費制維持を求める全国署名は67万筆以上集まった。

これらの活動が結実し、2004年改正裁判所法は2010年11月1日に既に施行されていたものの、同年11月26日、貸与制導入を1年延期する改正裁判所法が成立した。これにより、新第64期及び旧第65期は、貸与制ではなく給費制での司法修習となった。


(3)給費制廃止・貸与制導入(2011年11月)

その後も、給費制を維持して貸与制は廃止すべきとの活動を継続し、衆議院法務委員会へ貸与制導入をさらに延期する裁判所法改正法案が提出される等の動きもあったが、2011年11月採用の新第65期司法修習生から貸与制下での無給の司法修習が開始されてしまった。


(4)修習給付金制度の創設(2017年改正裁判所法)

しかし、その後も地道な活動を続け、毎年のように全国各地での市民集会や国会議員会館での院内集会を開催し、国会議員や地方議会議員への陳情、地方自治体による給費制復活決議の獲得、マスコミとの勉強会、記者会見等をとおして、この問題への理解を広めていった。

そして、2013年に開始した「司法修習生に対する給費の実現と充実した司法修習を求める団体署名」では、日本医師会、日本公認会計士協会、日本弁理士会等の全国組織の他、様々な消費者団体や労働組合等、全国1400以上もの団体に賛同していただいた。

2016年には、国会議員からの「司法修習生への経済的支援に対する応援メッセージ」の数が、議員の過半数を大幅に超える450名となった。

これら活動が実を結び、2016年6月に発表されたいわゆる「骨太の方針」に「司法修習生への経済的支援」との文字が入り、翌2017年4月、修習給付金を創設する改正裁判所法が成立したのである。


(5)取り残された「谷間世代」

2017年法改正の際、新第65期から70期までのいわゆる「谷間世代」の救済も改正法に盛り込むことを強く求めたが、それは叶わないまま現在に至っている。

そして、わずか6年で事実上給費制が一部復活したことで、谷間世代に該当する司法修習生が、司法修習においていかに不平等な取り扱いを受けていたかが、より浮き彫りとなった。


2 貸与制(無給制)での司法修習による谷間世代当事者への影響等

(1)谷間世代から寄せられた声

比較的規模の大きい複数の弁護士会で谷間世代へのアンケートを実施したところ、1000人以上から回答があり、当事者の生の声が寄せられた。多数寄せられた声の概要は、以下のとおりである。


  • 貸与金返済の負担が大きい
  • 年30万円の返済原資確保のため生活が苦しい
  • 経済的不安が大きいため、結婚や子どもを持つことを躊躇する
  • 修習専念義務を課しながら生活費は借金という制度は理不尽、不合理だったと言わざるを得ない
  • 64期までは給費制、71期からは修習給付金で、谷間世代だけ一切無給だったのは明らかに不公平、不平等(※厳密には旧第65期まで給費制)
  • 300万円の借金を背負ってスタートとなる制度はおかしい
  • 返還免除や一律給付措置を求める
  • 貸与金利用の有無にかかわらず、平等な措置を期待する
  • 国や社会に育ててもらったという意識を持ちにくい
  • 経済的事情から公益的活動や弁護士会の活動、また経済的に見合わない案件は控えざるを得ない

貸与金返済は司法修習終了後5年経過時から原則10年であるため、ちょうど結婚や出産、独立、自宅購入、介護等のライフイベントと返済時期が重なる人が多く、返済原資確保による生活への影響が少なからず出ていることが明らかとなった。そして、この「返済原資確保」自体が、無給による司法修習という不合理な制度下で修習を受けたことを常に意識させ、精神的負担になっているとの声も多い。

また、司法修習が給費制から貸与制(無給)に切り替わったことにより、「自分たちは国から見捨てられた」、「国にとって必要ない存在と言われているよう」、「司法の担い手ではなく単なる個人資格ということなのか」等の感覚を持つ人がかなりの人数いることも明らかとなっている。元々は困っている人の力になりたいと志高く法曹を目指したものの、不合理な制度により自身の法曹としての存在意義を感じられず、公益的活動等に積極的になれなかったり、公益的活動等はするものの「借金までさせられたのになんでお金にならないことをやってるんだろう」とふと思ってしまう等、谷間世代当事者の心深くに刻まれた国への失望感、それによる法曹としてのマインドへの影響は深刻であると言わざるを得ない。


(2)谷間世代と谷間世代以外の法曹の社会的役割は同じである

我々法曹は、基本的人権の擁護と社会正義の実現のため、個々の事案に真摯に向き合い日々活動するのであり、これは谷間世代の法曹も同じである。様々な社会問題に加え、昨今のコロナ禍等による新たな問題にも直面している現代において、谷間世代を含む法曹は、これらの諸問題に一丸となって立ち向かい、社会的経済的弱者の救済をはじめとする人権擁護活動に尽力することにより、法の支配を実現しなければならない。特に、全法曹の約4分の1を占める谷間世代には、これからの司法を担う中核的な存在として、積極的な活動を行っていくことが期待される。


(3)谷間世代への一律給付実現が必要であること

しかし、上述のとおり、谷間世代の法曹については、司法修習が無給だったことによる経済的、精神的影響が深刻な状態である。

そこで、谷間世代に対する不公平、不公正を是正すべく一律給付を実現し、谷間世代が抱える経済的・精神的足かせを取り除くことで、谷間世代の法曹がさらに活動の幅を広げ、社会的、公益的な役割を今以上に果たしていくことが、市民のための力強い司法を実現するために必要不可欠である。


3 この問題をめぐる現在までの動向、今決議する意義

(1)各地の弁護士会及び日本弁護士連合会による対応

2017年改正裁判所法により修習給付金制度が創設されて以降も、我々は谷間世代への事後的是正措置を求めて様々な活動を継続して行ってきた。

しかし、国による施策がなかなか実現されない中、2018年以降、各地の弁護士会において、当該弁護士会に所属する谷間世代の弁護士に対し、独自の経済的施策や業務支援型の施策を実施する動きも出てきた。当連合会管内においても、愛知県、岐阜県、福井、金沢及び富山県弁護士会で谷間世代会員に給付金を支給する施策(会により額は異なる)、三重弁護士会では谷間世代会員に希望書籍を配布する施策を実施している。また、日本弁護士連合会も、谷間世代会員に対して20万円を支給する制度を2019年に創設した。

とはいえ、各単位会及び日本弁護士連合会が実施できる施策は弁護士会の経済規模からごく限られるし、各弁護士会の規模によっても実施可能な施策に幅がある(なお、弁護士会の運営費の大部分は所属弁護士が支払う会費で賄われている)。また、谷間世代は弁護士だけでなく裁判官、検察官も含まれる。そのため、谷間世代全員に対する一律の是正措置が必要であるし、なにより社会インフラである法曹の養成は国の責務であって、給費制廃止という不合理な制度変更により生じた谷間世代問題を解消する責任が国にあることに変わりはない。


(2)名古屋高等裁判所は国による一律給付等事後的措置を期待

このような中、2019年5月30日、新第65期給費制廃止違憲訴訟名古屋訴訟(中弁連管内の新第65期45名が第1審原告)の名古屋高等裁判所控訴審判決は、結論においては原告(控訴人)敗訴としたものの、以下の「付言」を述べた。

『本件訴訟は(中略)、控訴人ら(中略)が自らの権利実現を主たる目的として訴訟を提起したわけではなく、訴訟を通じて給費制の重要性を訴え、より良い法曹養成制度の実現を願って訴訟遂行してきたことは明らかである。そして、本件訴訟係属中に給付金制を定めた平成29年改正法が成立し、控訴人らが願ったのとは違う形ではあるが、新たに法曹を志す者に対し一定の経済的支援が実現したのは、控訴人ら及び控訴人ら代理人を含む多くの人々が給費制の重要性を訴え続けてきたことが大きな理由であったことも明らかであろう。当裁判所としても、従前の司法修習制度の下で給費制が実現した役割の重要性及び司法修習生に対する経済的支援の必要性については、決して軽視されてはならないものであって、控訴人らを含めた新65期司法修習生及び66期から70期までの司法修習生(いわゆる「谷間世代」)の多くが、貸与制の下で経済的に厳しい立場で司法修習を行い、貸与金の返済も余儀なくされている(なお、(中略)貸与の申込みをしなかった者が必ずしも経済的に恵まれていたわけではなかったことが認められる。)などの実情にあり、他の世代の司法修習生に比し、不公平感を抱くのは当然のことであると思料する。(中略)例えば谷間世代の者に対しても一律に何らかの給付をするなどの事後的救済措置を行うことは、立法政策として十分考慮に値するのではないかと感じられるが、そのためには、相当の財政的負担が必要となり、これに対する国民的理解も得なければならないところであるから、その判断は立法府に委ねざるを得ない。』

この付言において、裁判所は、立法府や関係機関に対して給費制が果たす役割の重要性を伝えるとともに、谷間世代の不公平は是正されるべきであること、一律給付などの事後的救済措置を立法府が考慮すべきことを明確に指摘している。


(3)新型コロナウイルスによる活動への影響

2020年に入り、上記名古屋高等裁判所の付言をもとに国会に強く訴えかけていこうとしていた矢先、新型コロナウイルス感染症が広がった。国はコロナ対策一色となり、我々も様々な行動制限が求められる中、谷間世代問題の是正を求めた活動を積極的に行うことが難しい時期がしばらく続いた。

それでも、緊急事態宣言や地方自治体の独自宣言等の合間を縫って喫緊の課題である谷間世代問題の是正を求め、国会議員への陳情等の活動を続けていた。


(4)多数の国会議員からの応援メッセージ

2021年夏、ウィズコロナの生活様式がある程度定着してきたこともあり、国会議員から「谷間世代への応援メッセージ」を寄せてもらう活動を開始した。そうしたところ、国会議員の多くは谷間世代の存在を気にかけ続けてくれており、あっという間に100名を超える国会議員から応援メッセージが集まった。

2022年2月15日には国会議員との意見交換会(Web配信方式により実施)が開催された。これは、従前行っていた院内集会に代わるもので、実に3年ぶりの開催となったが、国会議員本人出席14名、秘書による代理出席14名を得て、議員からは前向きな発言が相次いだ。また、この日までに応援メッセージを寄せた国会議員は200名を超えた。

この意見交換会を皮切りに運動は一気に活発化した。

6月14日には衆議院議員会館において院内集会(Web配信と併用)を実施し、国会議員本人出席29名、秘書による代理出席41名、この日までに応援メッセージを寄せた国会議員は242名となった。

そして、8月以降、全国各地で「谷間世代への一律給付実現のためのリレー市民集会」と題し、8月20日福岡、8月27日愛知、9月17日大阪、10月14日仙台で既に市民集会が開催され、今後も10月29日札幌、11月12日広島(予定)、11月21日神奈川(予定)において市民集会が開催される。ちなみに、8月27日に愛知で実施した集会は当連合会及び当連合会管内の全単位会並びに日弁連が共催して実施し、国会議員本人出席6名、秘書による代理出席4名、当連合会管内選出議員26名から応援メッセージが寄せられた。

このように、特に今年に入って以降、広く国民にこの問題への理解を得るため精力的に活動しており、本年7月の参議院議員選挙結果によりメッセージ獲得議員数が一旦減少したものの、本年9月20日までに応援メッセージを寄せた国会議員は259名にのぼっている(全国会議員の36.3%)。


(5)今、この決議を行うことの意義

このように、谷間世代問題解消へ向けた運動が大きくなっている今こそ、中部6県が属する中部弁護士会連合会という大きな単位の組織において、谷間世代への一律給付実現を求める決議をすることは大変意義があるものと思料する。

この決議が対外的なアピールはもちろん、運動を大きく後押しし、一律給付実現への一助となることを切に願う。

第2 修習給付金の増額について

1 給費制の概要(1947年〜2011年10月)

司法修習生は、司法試験合格者採用基準を満たす者が最高裁判所に採用申込みをし、最高裁判所に採用された者である。そして、給費制下において、司法修習生の給与は大学院を卒業した公務員の給与に準ずるとされ、毎月の基本給と年2回の賞与に加え、通勤手当、住居手当、扶養手当、地域手当、寒冷地手当が毎月支給されていた。なお、新第64期の基本給は月額20.4万円であった。

また、給費制下の司法修習生は、全員裁判所共済に加入することとなっており、司法修習終了後2年間は共済加入を任意継続することも可能であった。


2 現行修習給付金制度の概要(2017年〜)

(1)2017年に創設された修習給付金制度は、基本給付金月額13.5万円、自ら居住するため住居を借り受け家賃を支払っている人が対象の住居給付金月額3.5万円、修習に伴い住所又は居所を移転する必要がある人が対象の移転給付金(移動距離に応じ支給)の3つの給付金から成り立っている。

新第64期が基本給月額20.4万円(賞与及び各種手当別途)であったことと比べれば、修習給付金がいかに低い水準であるか明白である。

また、司法修習生は全国各地に配属され、47都道府県全てで実施されるところ、上記金額は、どの都道府県に配属されても同額である。従前の給費制では、地域手当や寒冷地手当により地域の事情により高額となる家賃や燃料費等を賄うことができたが、修習給付金制度にそのような配慮は一切ない。

(2)2017年以降に司法修習生となった第71期以降の司法修習生については、修習給付金制度と並行して貸与制も継続されており、第71期以降の貸与金の額は月額10万円(扶養家族がいる場合申請により2.5万円増額して貸与。なお、新第65期から第70期までは基本月額23万円であった。)となっている。

そして、第71期以降も、毎年3分の1以上の司法修習生が貸与制を利用している(71期:543人(35.8%)、72期:499人(33.7%)、73期:598人(40.6%)、74期:629人(43.2%)、75期:527人(39.7%))。

また、貸与制を利用していない司法修習生たちからは、「実家から通っているからぎりぎりなんとかなっているが、かなり切り詰めた生活で大変」、「本を買うお金がない」、「食費を削るため朝晩しか食べない」、「親からお金を借りている」等の声が聞こえてくる。


3 修習給付金の増額が必要であること

修習給付金が創設されたとはいえ、未だ毎年500〜600人前後の司法修習生が最高裁判所からの借金を併用しなければ修習生としての生活が成り立たず、貸与制を利用していない修習生も、必要な書籍等の購入を控え、日々生活費を心配しながらの修習を強いられている人が相当多数存在する。また、決議本文で述べたとおり、修習給付金から税金、年金、健康保険料を支払うと、生活保護費相当額に満たない場合さえある。

これでは、自身でノートパソコン等を準備し、毎日基本的にスーツを着用し、平日フルタイムで配属先の裁判所、検察庁、法律事務所及び埼玉県和光市にある司法研修所に通い、法曹としてのスキルとマインドを身に着ける司法修習に、約1年にわたり心身共に専念することは困難であると言わざるを得ない。現行の修習給付金制度は、既述の名古屋高等裁判所判決が述べた「従前の司法修習制度の下で給費制が実現した役割の重要性及び司法修習生に対する経済的支援の必要性」をふまえた制度になっていないのである。

以上のとおり、現行制度下での司法修習生の実態から修習給付金の額が不足していることは明らかで、修習給付金の額を従前の給費制相当額まで増額し、法曹の卵である司法修習生が真に修習に専念できる環境を実現することが、この国の司法の未来にとって重要であり必要である。

第3 結語

以上から、今日、2022年10月21日に、中部弁護士会連合会として谷間世代への一律給付及び修習給付金増額の決議をすることは、2011年以来の給費制廃止に伴う一連の問題にいよいよ決着をつけるため、極めて重要である。

よって、ここに決議する次第である。

以上

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