中部弁護士会連合会


中弁連とは

中弁連からのお知らせ

リンク集

TOP

中弁連からのお知らせ

すべての人の健康で文化的な最低限度の生活が
保障される社会を協同して築くことを誓う決議

憲法は、個人の尊厳原理に立脚し、幸福追求権について最大限の尊重を求め(第13条)、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障している(第25条)。そして、生存権の保障を基本理念として、労働者に対して人間に値する生存を保障すべきものとする見地に立ち、勤労の権利および勤労条件を保障し、経済的劣位に立つ労働者に対して実質的な自由と平等とを確保するための手段として労働基本権を保障している(第27条、第28条)。

しかるに、我が国では、従来から仕事・住居がない野宿者を含むホームレス状態の人たちが見られ、厳然と格差、貧困は存在していたが、特に昨今、「ワーキングプア」と呼ばれる人たちが急増し、格差と貧困が可視化するとともに急速に拡大している。「派遣切り」「期間工切り」などにより労働市場から放り出された多くの人々が住居を失い、文字どおり路頭に迷っている。2009年9月までに職を失う非正規雇用労働者は、厚生労働省によれば、少なくとも23万人に迫り、製造業が盛んな愛知県では全国の都道府県で最多の3万8000人を超え、同じく三重県では愛知県、長野県、静岡県に次ぐ多さで8600人を超え、岐阜県では7000人を超えるといわれている。福井県、石川県、富山県でも有効求人倍率は前年同月と比べて20か月以上連続して減少しており、雇用情勢は悪化している。

このような状況下で、一方では、愛知県、岐阜県、三重県で市民が餓死・孤独死する事件が起きており、生活保護行政の問題が露呈している。


弁護士は、基本的人権の尊重と社会正義の実現をその使命とする。「100年に1度の経済危機」「時代の転換点」と言われ、多くの生活困窮者が路頭に迷い、基本的人権そのものを根こそぎ奪われている今こそ、私たち弁護士がその使命を果たすことが切実に求められている。

他方、現在の厳しい社会状況を、弁護士のみによって解決することはもとより困難であって、私たちは、国、地方自治体に対して、求めるべきことは求め、連携すべきことは連携し、また、それ以外の諸機関、諸団体、他職種、市民とも協同してこの問題に積極的に取り組み、真の意味で基本的人権が尊重され、社会正義が実現される社会を築かなければならないものと考える。

そこで、当連合会は、次のとおり取り組むことを通じ、すべての人の健康で文化的な最低限度の生活が保障される社会を協同して築くことを誓う。


  1. 国、地方自治体と連携し、また、諸機関、諸団体、他職種、市民と協同して、市民がアクセスしやすいワンストップの相談(労働問題・雇用保険・就職支援・生活保護・住居・多重債務・公的貸付・健康・医療など)を行う体制を整え、強化すること。
  2. 生活に困窮した人たちがあまねく法的支援を受けることができるようにするため、国、日本司法支援センターに対して民事法律扶助制度の抜本的改善を求めるとともに、民事法律扶助制度の償還猶予・免除制度、生活保護申請代理等に関する法律援助事業を幅広く活用すること。
  3. 基本的人権の擁護を使命とする在野法曹の立場から、国、地方自治体に対して、次に掲げる事項を始めとした積極的かつ責任ある提言、要請を行い、各単位会との連携体制を一層強化し、提言、要請を実現するために、当連合会を挙げて取り組むこと。

ア 国に対して、労働基準監督署や労働局などの行政機関が違法行為を摘発し監督する体制を強化し、非正規雇用の増大に歯止めをかけ、ワーキングプアを解消するため労働法制と労働政策を抜本的に見直すよう求めること。特に、直接雇用の原則および「労働者派遣は臨時的・一時的なもの」との原則に立ち返り、派遣労働者の保護に資するように労働者派遣法制の抜本的改正を行うよう求めること。

イ 国および地方自治体に対して、すべての労働者が健康で文化的な生活を営むことができるよう最低賃金を引き上げるよう求めること。

ウ 国および地方自治体に対して、社会保障費の抑制方針を改め、また、生活困窮者が社会保険や生活保護の利用から排除されないように、社会保障制度の抜本的改善を図り、セーフティネットを強化するよう求めること。


 以上のとおり、決議する。

        2009(平成21)年10月16日


中部弁護士会連合会



提案理由



戻る


Copyright 2007 CHUBU Federation of Bar Associations