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持続可能な社会の実現のために、実効性のある
生物多様性地域戦略の策定を求める宣言

生物多様性とは、様々な生態系が存在すること並びに生物の種間及び種内に様々な差異が存在すること、すなわち生態系、種、遺伝子の多様性をいう。生物多様性は、食糧、医薬など物的資源の供給のほか、水土の保全や気候変動の緩和など生物の生存に不可欠な機能を果たしており、人類にとって安定した存続のための不可欠の基盤である。生物多様性は、過去から受け継がれたものであって、我々はそれを将来の世代が現在と等しく享受できるように引き継ぐ責任がある。

しかし、日本を含め世界各地において、生物多様性は人の活動によって深刻な危機に陥っている。このような地球規模での生物多様性の危機状況のもと、1992年に生物多様性条約が採択され、2002年に開催された第6回締約国会議において、「締約国は2010年までに生物多様性の現在の損失速度を顕著に減少させる」といういわゆる2010年目標が定められた。その節目となる2010年には、第10回締約国会議(COP10)が名古屋市において開催される予定であり、わが国は議長国として生物多様性保全を率先して果たすべき役割を担うことになる。

国は、生物多様性条約に基づいて3次にわたり生物多様性国家戦略を策定し、わが国における生物多様性の危機の原因を、開発による生息地の破壊・分断、里山など二次的自然の荒廃、外来生物種の移入、及び地球温暖化であると分析し、一定の対策をとってきたものの、生物多様性の危機は引き続き深刻な状況にある。このような下で、2008年に成立した生物多様性基本法は、地方公共団体に対し、生物多様性地域戦略(以下「地域戦略」という。)の策定に努めることを求めている(第5条、第13条)。

生物多様性は、それぞれの地域において歴史的経過を経て形成された固有の生態系を包括したものであって、地域における生物多様性の保全こそが最も重要である。したがって、各地方公共団体が策定する地域戦略は、国家戦略の内容を具体化するとともに、地域の実情を踏まえて生物多様性を保全する実効性のあるものでなければならない。

現在、一部の地方公共団体等において地域戦略の策定が行われつつあり、先進的な取組みとして評価されるものの、地域の生物多様性の現況と分析が不十分であったり、抽象的な目標を掲げたにすぎないものであったり、住民や地域の実情に詳しい専門家等の参加が不十分であるといった問題があり、実効性のある地域戦略という点で未だ課題が残されている。

また、開発行為等事業実施の中で生物多様性を保全していくためには充実した環境影響評価制度が不可欠であり、この点の改善も必要である。

更に、財政及び要員の点でも困難を抱える地方公共団体が少なからず存在する中で、実効的な地域戦略を策定し実行するためには、財政的裏付けが不可欠である。

よって、当連合会は


  1. 都道府県及び市町村に対して、以下の内容の実効性のある地域戦略を策定することを求める。
    (1)内容面

    [1] 地域における生物多様性の現況及び課題を科学的に調査・分析して明らかにすること

    [2] [1]に基づき、2010年目標及びCOP10において策定が予定されている新たな目標を踏まえた生物多様性保全の中長期的目標を設定して、それを達成するため短期の数値等の具体的目標を実効性のある方法を示して設定すること

    [3] 保全目標の達成状況の事後的検証と目標の見直しを方法を含めて明記すること

    (2)手続面
    地域戦略の策定、実施、検証及び改訂の全ての段階において住民参加が保障されていること、住民が主体的役割を果たし得る制度になっていること、並びに、地域の実情に詳しい専門家やNGOが科学的・技術的な観点から戦略の全ての段階において積極的に関わることを明記すること
    (3)環境影響評価制度
    現行の環境影響評価条例を生物多様性に係る科学性と客観性並びに住民参加を強化する面から改正し、併せて生物多様性保全のための計画アセスメント制度、戦略アセスメント制度を導入すること
  2. 国に対して、都道府県及び市町村が実効的な地域戦略を策定・実施できるように、財源移譲を含む抜本的な財源措置を行うよう求める。

以上のとおり、宣言する。

        2009(平成21)年10月16日


中部弁護士会連合会



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