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「改正」少年法のもとでの少年審判の適切な運用を求める決議・提案理由

    少年法第1条は「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年及び少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講じることを目的とする」と規定しています。

    この少年法の理念に基づき、少年審判は非公開の原則をとっています。重大な犯罪をする少年は、ほとんどの場合、その育ってくる過程に問題があり、適切に育てられていなかったり、心が深く傷つく体験を重ねていることなどが背景、原因に存在しています。その結果、少年はおとなへの不信、自己否定、感情表現ができないなどの問題を抱えています。少年審判は、そのような少年の抱えている問題を適切に理解、配慮しながら行うため、非公開を原則としているのです。

    少年審判における裁判官と少年、あるいは少年と家族との対話が、その後の少年の立ち直りに大きな影響を与えたというケースは少なくありません。少年審判のこのような機能は、今後も大切にし、より充実したものにしていく必要があります。

    今回の少年法「改正」に当たっては、被害者等の傍聴が少年審判の運用に及ぼす影響の重大さに鑑み、両院とも付帯決議で政府及び最高裁判所に対し、(1)犯罪被害者等の尊厳にふさわしい処遇の保障という犯罪被害者等基本法の基本理念を十分に尊重しつつ、今後とも少年の健全な育成という少年法の目的が確実に達成されるよう努めること、(2)犯罪被害者等による少年審判の傍聴は、審判に支障が生じない範囲で認められるものであることを踏まえ、少年が委縮し率直な意見表明ができなくなることがないよう、広めの審判廷の使用、座席配置の工夫等適切な審判廷の在り方について検討の上周知すること、(3)犯罪被害者等が別室でモニターにより少年審判を傍聴する方法については、犯罪被害者等からの要望等を勘案しつつその利点及び問題点を検証し、幅広い検討を行うこと、(4)犯罪被害者等による記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大については、社会記録が少年や関係者のプライバシーに深くかかわる内容を含むものであるとして引き続きその対象から除外された趣旨を踏まえ、法律記録の閲覧又は謄写をさせることの相当性の判断をする場合においても、少年や関係者のプライバシーの保護に十分留意する旨周知すること、(5)犯罪被害者等による少年審判の傍聴や犯罪被害者等への少年審判の状況の説明の適切かつ円滑な実施等のために、家庭裁判所がその責務を十分に担えるよう、家庭裁判所調査官、裁判所書記官等の増員、広い審判廷の確保その他の必要な人的・物的体制の整備・拡充に努めること、(6)少年審判手続における犯罪被害者等への配慮に関する制度の在り方についての検討に資するため、関係省庁は、国会に対し、本法に基づく犯罪被害者等による審判の傍聴、記録の閲覧・謄写、犯罪被害者等への審判の状況の説明等の実施状況等について、適時、積極的に情報提供をすること、を求めました。

    これらの付帯決議の趣旨も踏まえ、犯罪被害者等による少年審判の傍聴によって、少年の率直な意見表明が損なわれないよう、第一に発達上特に未成熟で表現能力が不十分である触法少年など年少の少年保護事件について、とりわけ慎重な対応を求めること(第1項)、第二に現状の審判廷で傍聴が行われ、審判手続に立会する人数が増えた結果、少年が圧迫感を感じ、意見表明が困難となる事態も予想されるため、かかる事態を防ぎ、少年法の理念が損なわれないよう、ラウンドテーブル方式の広い審判廷の設置を求めること(第2項)、第三に少年への心理的影響を少なくする一つの方法として、犯罪被害者等がモニターにより傍聴する方法についての幅広い検討を行うこと(第3項)、を提案します。

    また、これからは、一方を高めれば、もう一方が沈んでしまうというように、少年の権利と犯罪被害者等の権利を対立的に考えるのではなく、双方が充実したものになるよう、私たちは議論を重ね、知恵を絞っていく必要があります。犯罪被害者等が少年審判を傍聴した際に、期せずして少年と犯罪被害者等とが対立的になってしまう場面も予想されます。犯罪被害者等の傍聴を行う際には、家庭裁判所調査官が事前に犯罪被害者等と面接を行い、少年審判の状況や機能を丁寧に説明したり、犯罪被害者側に代理人弁護士が選任されている場合には、付添人弁護士と犯罪被害者側代理人弁護士を交えた協議を行ったりなど、少年と犯罪被害者等の双方の権利を実質的に保障するための準備として、調整的役割を果たすことが家庭裁判所に求められていることから、第4項及び第5項を提案します。

    被害者傍聴は、少年と犯罪被害者等の「最初の対面」になりますが、被害者等にとっても少年にとっても少年審判が有益なものとなるよう、当連合会は、最高裁判所及び各家庭裁判所に対して、物的・人的体制の整備等を求めるとともに、当連合会内部において、また、家庭裁判所等の関係機関との間で、協議を継続していくことを決意し、本決議をします。


以 上




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