中部弁護士会連合会

中弁連からのお知らせ

日本司法支援センターの充実を求める決議・提案理由

第1 日本司法支援センターの準備状況

  1. 2004年(平成16年)5月26日、総合法律支援法(以下「法」という)が制定されたが、これを受け、当連合会は、同年10月15日開催の第52回定期弁護士大会において、日本司法支援センター(以下「支援センター」という)を中核とする総合法律支援事業の実施が「民事、刑事を問わず、あまねく全国において、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会」の実現をめざしている点を高く評価しつつ、制度の具体化にあたっては、弁護士会の関与が十分保障されること、過疎対策や法律扶助等の業務の一層の充実がはかられること、刑事弁護の自由と独立が十分確保されることなどを求めるとともに、制度を担うわれわれ弁護士は支援センターの組織と業務の両面にわたって積極的に関与していくことを決意する旨の「司法支援センターに関する決議」を採択した。

  2. その後、法務省総合法律支援準備室は、最高裁判所・日本弁護士連合会・法律扶助協会と定期的に協議を重ね、現在、地方事務所の設置場所・規模・設置数、所長・副所長・スタッフ弁護士・職員の概数や報酬体系、アクセスポイントでの情報提供の形態、民事法律扶助や国選弁護の報酬基準など制度の具体的内容について検討を進めている。

    また同年11月には、地方事務所設置予定地に各地の地方準備会が設置され、委員長を中心にして、関係機関の洗い出しと当該機関との連携の構築、地方事務所の選定、支部・地域事務所の必要性の有無の検討等を中心に、各地方事務所の設立準備作業を進めている。

  3. このように、2006年(平成18年)4月の設立、同年10月の業務開始に向けて、現在、支援センターの組織及び業務運営のための具体化作業が鋭意進められているが、そのような時期にあたり、当連合会は、支援センターが「いつでも、どこでも、誰でも、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会」の実現をめざすという「司法改革の基本理念」(法2条)に沿ったものとなるように、とりわけ以下の諸点について十分な配慮がなされるべきことを要望するものである。

第2 地方事務所の組織および運営について

  1. 支援センターは、@法的紛争解決のための情報の提供A民事法律扶助B国選弁護人推薦C司法過疎対策D犯罪被害者支援などを業務とするが、支援センターの事務所については、主たる事務所を東京に置き、地域の実情などを勘案して必要な地に事務所を置くと定められている(法16条)。これを受けて現在、各地方裁判所本庁所在地50箇所に地方事務所を設置することを想定し、その準備が進められている。

  2. ところで、支援センターの業務は、あまねく全国において法による紛争解決に必要な情報や法的サービスの提供が受けられる社会を実現するために行われるものであるから、それに必要な限度で、統一的な業務運営がなされるべきことは当然のことである。

    しかし、各地域における支援センターの具体的業務は、各地方事務所が実施するところ、地域住民の求める法的サービスの内容やその提供体制、これまでの弁護士会・地方自治体などによる法的サービス・情報提供の取り組み状況などは、地域によりそれぞれ異なり、且つ特色を有している。また、併せて各地方特有の課題をも抱えている。このような地方の実情を無視して、地方事務所が全国的に画一的な業務運営を行うときは、かえって各地方で求められる情報や法的サービスの提供を円滑に行うことができない事態が生ずる恐れがある。したがって、地方事務所における業務運営は、地方の実情に応じ、地方の意見を十分反映させながら、地方事務所が主体的に行っていくことが何よりも重要である。

  3. 法も「支援センターは、地域における業務の運営に当たり、協議会の開催等により、広く利用者その他の関係者の意見を聞いて参考とし、当該地域の実情に応じた運営に努めなければならない」(法32条4項)として同様の趣旨を定め、また現在、各地方に地方協議会を設置することを予定している。

    しかし、それだけでは十分ではない。地方事務所の行う業務は、情報提供・民事法律扶助・刑事弁護などから審査・苦情処理に至るまで多岐にわたり、またそれぞれの分野において法的専門性が求められ、多くの弁護士・司法書士・相談員等による日常的サポートが必要である。現在、各地方事務所に所長の外に副所長数名の設置が構想されているが、それ以外にも、地方の法的紛争解決の実情に明るい弁護士など専門家から構成される運営委員会等を設け、地方事務所における業務が主体的且つ円滑に運営されるようサポートしていくことが必要不可欠である。この点は、法律扶助協会が各支部において運営委員会、総務委員会等の組織を設けて業務の運営を行ってきたこれまでの経過を十分参考にすべきである。

第3 支部・出張所・拠点の設置について

  1. 前記のとおり、支援センターの地方事務所は、各地方裁判所本庁所在地に設置されることが想定されている。

    しかし、各地に1箇所の地方事務所だけでは、その地域において「あまねく全国において、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を実現する」という法の理念を実現することはできないし、また現在法律扶助協会が提供している法的サービスを後退させることにもなりかねない。

    地方裁判所は、訴訟件数や地域住民の利便性を考慮し、本庁以外に複数の支部を設けており、弁護士会も裁判所支部に対応して、支部を設けている。支援センターも、同様の観点から、地方事務所の下部機関として、職員が常駐して情報提供・民事法律扶助・国選弁護関係業務を扱う「支部」、同じく職員が常駐して情報提供・民事法律扶助業務を扱う「出張所」、職員が常駐しないで民事法律扶助の受付・審査・相談等を行う「拠点」の設置を予定しているが、地域住民に対するきめ細かな情報提供や法的サービスの提供を行うためには、地方が要望する地に支部・出張所・拠点を積極的に設置して、住民が身近に支援センターを利用できる体制を整える必要がある。

  2. 当連合会内にも、地方裁判所支部地域に相当数の民事法律扶助事業や公的刑事弁護事件の見込まれる地域がある。平成16年度の当連合会内の各支部の事件数を見ると、名古屋地方裁判所岡崎支部管内(@民事扶助相談件数103件、A国選弁護事件数631件)、同豊橋支部管内(@219件、A370件)、津地方裁判所四日市支部管内(@65件、A302件)、富山地方裁判所高岡支部管内(@20件、A137件)などが法的ニーズの比較的大きな地域である。このような法的ニーズの比較的大きな地域においては、職員の常駐する支援センターの「支部」や「出張所」などを設置して、その地域における具体的な業務運営(国選刑事弁護人の推薦・民事扶助担当弁護士の依頼等)に当たらせることが、適正な業務運営を可能とし、また、当該地域の実情にも沿うこととなる。

  3. また、それは同時に、情報提供サービスの向上にも資する。情報提供業務については、後述のとおり、コールセンターの設置が検討されているが、複雑な問題を抱えたケースの場合には、情報提供のためとは言え、面談による対応が必要となるケースも少なくない。このようなケースでは、市民が支援センターに出向く必要があるが、支援センターの事務所がその居住地から遠方にあり過ぎると、市民は支援センターに出向くことを躊躇し、結局支援センターの利用を断念することになる。支部や出張所などが複数設置されていれば、このような事態を少しでも回避できるはずである。

  4. さらに、法律扶助協会は、社会の隅々にまで人権保障を浸透させるため、資力の乏しい者や高齢者・障害者など法的サービスを受けにくい市民への扶助事業として「法律扶助相談」を行ってきた。現在、当連合会の6県下では、弁護士会館や法律相談センターなどの常設相談場所のほか、地方法務局や自治体との共催で巡回相談場所を設け、法律扶助相談の拡充に努力している。

    支援センターは、このような法律扶助協会の事業を発展拡充することが求められており、そのためにも、地方事務所の「拠点」を積極的に設置する必要がある。

  5. このように、支援センターは、人口・面積・事件数等を勘案しながら、各地域の要望に応じて、支部・出張所・拠点を積極的に展開していくことが必要である。

第4 常勤スタッフ弁護士の配置について

  1. 支援センターの本来業務の一つに「司法過疎対策業務」がある。司法過疎地域の住民に対しても適正な法的紛争解決の支援をするためには、支援センターに所属してこれらの業務に当たる「常勤スタッフ弁護士」に期待するところが大きい。そのため、支援センターは、常勤のスタッフ弁護士の執務する「地域事務所」を設置することとしている。地域事務所には、司法過疎地域において法律サービス全般の業務を行う「4号業務対応地域事務所」(法30条4号参照)と、それ以外の地域において弁護士数の不足などの事情により国選弁護事件や民事法律扶助事件に迅速・確実に対応することが困難な地域に設置される「国選・扶助対応地域事務所」が予定されている。

  2. ところで、これまで日弁連は、司法過疎対策として、いわゆる弁護士ゼロワン地域に「ひまわり基金法律事務所」を設置する運動を展開してきており、その結果、平成8年当時には全国に78あった弁護士ゼロワン地域(ゼロ地域は47)が本年7月26日現在、48にまで減少している(ゼロ地域は10)。当連合会内では、熊野・小浜・輪島に「ひまわり基金法律事務所」が設置されたことにより、現在、極端な司法過疎地域は存在しない状況にある。

    ただ、国民の司法へのアクセスという観点から見た場合、まだまだ不十分である。例えば、岐阜県郡上地域は、日弁連が裁判所支部を単位として定義するいわゆる「弁護士ゼロワン地域」ではないが、それはたまたま地方裁判所支部が廃止されたから「弁護士ゼロワン地域」でなくなっただけであり、地域の面積・本庁からの交通条件等からすれば、実態は司法過疎地域と何ら変わりはない。ここには弁護士ゼロワン地域と同じく、常勤スタッフ弁護士を配置することが望ましい。

    なお、司法過疎地域への常勤スタッフ弁護士の配置に当たっては、地方裁判所本庁・支部の存否といった形式的な基準により判断すべきではなく、これまで司法過疎対策に取り組んできた地元弁護士会の意向を十分に踏まえながら、地域の実態に則して判断することが肝要である。

  3. 一方、被疑者国選弁護の対象事件は、2009年(平成21年)に必要的弁護事件まで拡大されるが、この時期に見込まれる国選事件数に比して弁護士数が少ないため、同年における国選弁護の対応が不可能な地域が全国各地に存在する。

    当連合会内でいえば、岐阜県東濃地域(岐阜地方裁判所御嵩・多治見支部管内)がそれにあたる。この地域は、地理的に見て、本会からの応援に相当困難を伴う地域である。同地域には現在8人の弁護士がいるものの、同年に予想される弁護士1人当たりの国選事件数は年間20件を超える見込みであり、現実問題として国選刑事弁護事件への対応は不可能であると予想される。また、愛知県の三河地域(名古屋地方裁判所岡崎支部・豊橋支部管内)も同様である。この地域は、上記に述べた通り、支部自体の設置が必要な地域であるが、併せて、地理的に本会からの応援が困難な地域でもある。相当数の弁護士はいるものの(岡崎支部管内45人、豊橋支部管内36人)、2009年(平成21年)の弁護士1人あたりの国選弁護事件数の割合が年間15件を超えることになり、現実問題として、それへの対応は不可能であると言われている。

    国選刑事弁護人の選任態勢は絶対的に確立されなければらない。そのため、支援センターは、特に国選弁護人選任対応が困難で、地元弁護士会からの強い要望のある地域には、地域の実情を正しく把握した上で、常勤スタッフ弁護士を積極的に配置することが必要である。

第5 コールセンター構想について

  1. 支援センターの情報提供業務に関し、コールセンターの設置が検討されている。これは、全国に1箇所のコールセンターを設置し、その電話オペレーターが第1次的に支援センターの情報提供を行い、そこで対応できない案件について地方事務所に繋いで、地方事務所の情報提供担当職員が電話または面談により情報提供を行う、という構想である。

  2. 確かに電話によるアクセスは市民が気軽に利用できる方法であり、また総合法律支援準備室が調査したとおり、全国の支援センターに年間150万件以上のアクセスがあって、その殆どが電話によるものであるとすれば、これをすべて地方事務所で受けることは実際上不可能である。したがって、その観点から、簡易・定型的な情報提供を効率的に行って前さばきを図ろうとするコールセンター構想は、有益かつ効率的なものと言える。

  3. ただ、この構想では、コールセンターが支援センターの顔ともいうべき存在となり、ここでの対応の善し悪しが、支援センターへの評価に決定的な影響を与えることになる。ここでの不適切な対応は、「二次被害」や「たらい回し」の問題をも生ずることになり、支援センターへの信頼を損なわせることにもなりかねない。

    したがって、まず、コールセンターでは、相手が悩みを抱えた市民であることを十分に意識して、親切で丁寧な対応をする必要がある。FAQ(よくある質問への回答マニュアル)の策定にあたっても、これを念頭において慎重な配慮をしなければならず、対応する電話オペレーターには、十分な研修が実施されなければならない。

  4. また、この構想では、複雑な問題を抱える市民は、コールセンターを経て地方事務所に繋がれ、そこから法律相談所や紛争解決機関の窓口に紹介されることになる。従って、市民がコールセンターの窓口と地方事務所の窓口で同じ説明を繰り返すことを余儀なくされることのないように工夫する必要がある。そのための適切且つ効率的な転送システムの構築が求められる。

    また市民には、一度のアクセスで適切な法律相談窓口や紛争解決機関に速やかにたどり着けるようにする必要がある。したがって、弁護士などへの緊急相談や行政機関の緊急対応が必要なものについては、コールセンターや地方事務所が適切な相談機関との間で予約処理ができるまでに、支援センターと関係機関との緊密な連携システムを構築することが必要である。

第6 自主事業について

  1. 法律扶助協会では、民事法律扶助法の適用対象とならないものの、人権保障等の観点から弁護士による法的援助が必要な事案について、同協会の自主財源をもって、いわゆる「自主事業」としての法律援助を行ってきた。

    自主事業の種類としては、刑事被疑者弁護援助及び少年保護事件付添人扶助のほか、子どもの虐待保護、犯罪被害者法律援助、精神障害者の退院請求援助、少額消費者事件援助、高齢者・障害者出張相談などがあり、全国一律の外、各地方毎の実情・要請に応えるものとして、弾力的に取り組まれてきた。

    自主事業は、社会的に弱い立場にある市民にとって、実質的な裁判を受ける権利ないしは権利救済を受ける地位の保障に欠くことのできない事業として展開されてきたものであり、いずれも、「法による紛争の解決に必要なサービスの提供」という法2条の目的に叶うものであって、将来的には、支援センターの本来業務として位置付けられ、国費による援助体制が実現されるべきである。

    なお、高齢者・障害者出張相談は、法32条2項が高齢者や障害者等が支援センターの行う業務を利用しやすいように特別な配慮をすべき義務を定めている趣旨から、速やかに、支援センターの本来業務として制度化されるべきである。

  2. 刑事被疑者弁護援助のうち、法定合議事件等については、2006年(平成18年)度から支援センターの本来業務に位置付けられ、2009年(平成21年)度からは、必要的刑事弁護事件にまでその範囲が拡大される。また、少年保護事件付添扶助についても、その一部について、国費による公的付添人制度が導入される見通しである。

    この2事業のうち、本来業務となる部分以外については、法30条2項の委託業務として、支援センターに委託する方向で検討が進められている。その場合には、弁護権の独立性が損なわれることのないような運用が確保されなければならない。それに加えて、現在、単位弁護士会によっては、両事業に対して、日弁連等の援助金に単位会の「補助金」を上乗せして弁護活動を援助したり、少年事件全件を対象として付添人扶助を行っているところもある。支援センターへの委託業務としても、このような各地の実情に即した柔軟かつ弾力的な運用が確保・維持される必要があり、それを可能にするために、委託契約の内容についても十分な検討がなされなければならない。

  3. それ以外の自主事業については、弁護士会、法律扶助協会(もしくは新たなNPO法人)等の事業として存続を図りつつ、これを支援センターへの委託業務として継続させることが検討されている。委託の方法としては、日弁連(もしくは法律扶助協会本部)から支援センターに一括委託する方法や、各単位弁護士会(もしくは法律扶助協会支部)から支援センター地方事務所に対して個別に委託をする方法等が考えられる。

    事業の発展性の見地から、前者の方法が有力であるとされているが、その場合であっても、全国一律・同一内容の法的サービスの提供という側面が強調され過ぎる余り、それが可能な自主事業についてのみ委託するとか、全国同一要件・同一手続でなければならないとするなど、硬直的な運用となることは望ましいことではない。ここでもよりきめの細かい委託契約が検討される必要がある。また、こうした弾力性の要請は、将来それが支援センターの本来業務とされる場合でも十分尊重されるべきである。

  4. 要するに、法律扶助協会の自主事業には、その発足の過程で各支部の強いニーズ・個別的な実情が存し、また、その運用においても、権利擁護の要請から、事件の性格等を勘案して、柔軟かつ弾力性が尊重され、資力の乏しい市民からの要請に応えてきた。かかる法律扶助協会の自主事業の柔軟性・弾力性の精神は、支援センター発足後も維持されるべきであり、日弁連からの一括委託の方法による場合であっても、具体的な業務の運用においては、現場である各地方事務所の自主性を尊重し、その地方の実情に即した運用がなされるべきである。そのため、必要があれば、各単位弁護士会で、個別に支援センターの地方事務所に委託ができ、また、各地方で個別に委託内容を定めることができるような制度も併せ工夫されるべきである。

第7 犯罪被害者支援について

  1. 支援センターは、被害者等の援助に関する制度や被害者等の援助を行う団体等に関する情報等の提供を行うことにより、犯罪被害者支援を行い(法30条1項5号)、特に「被害者等の援助に精通している弁護士を紹介する」ことを例示して、被害者等の援助が実効的に行われることを確保するために必要な措置を講ずるよう配慮することとされている。これまで公的な支援の立ち後れが指摘されてきただけに、国民の支援センターに寄せる期待は大きい。

  2. 他方、2005年(平成17年)4月施行の「犯罪被害者等基本法」(以下、基本法という)は、犯罪被害者等が、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有することなどを基本理念として定め、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進することで、犯罪被害者等の権利や利益の保護を図ることを目的としている。それらの施策を「犯罪被害者等基本計画」に基づいて推進するものとし、現在、内閣府に設置された犯罪被害者等施策推進会議において、策定作業が進められている。そこでも、支援センターへの期待は大きい。

  3. 犯罪被害者等は、犯罪発生直後から、時間の経過とともに、多種多様な問題に直面する。それゆえ、基本法は、国、地方公共団体、支援センターその他の関係機関や民間団体等の連携協力を謳い、犯罪被害者等が被害を受けた時から再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう適切な施策を講ずることを求めている。しかし、多くの犯罪被害者等は、犯罪や二次被害による精神的なダメージ等のため、自ら進んで支援を依頼することが困難である。この点、支援センターは、前記のように被害者等の援助の実効性確保のために必要な措置を講ずるよう配慮し、特に、利用者が高齢者等紛争の解決に必要な情報やサービスの提供を求めることに困難がある者の場合には、支援センターの業務が利用しやすいものとなるように特別の配慮をしなければならないとされている(法32条2項)。

  4. 以上から、第1に、支援センターは、国、地方公共団体、警察、弁護士会、犯罪被害者支援団体等の様々な専門機関、団体と連携協力し、当該犯罪被害者等の相談内容に応じた最も適切な専門機関、団体や弁護士その他の専門職を紹介するとともに、それらの専門機関ないし専門職の間の連絡調整を行う「コーディネーター」の役割を果たすことが期待されている。

    第2に、前記「コーディネーター」の役割は、当該犯罪被害者等が被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、時間経過の長短を問わず、必要な支援等を途切れることなく受けることができるように果たされなければならない。

    第3に、自ら支援を依頼することの困難な犯罪被害者等のニーズを掘り起こすため、電話に留まらず、面接その他支援センターへのアクセスを可能ならしめる幅広い手段を用意しなければならない。

  5. 支援センターが以上の役割を果たすためには、犯罪被害者等の支援について研修を受け、犯罪被害者等に寄り添ってソーシャルワークを行うことのできる専門のスタッフとその活動拠点となる施設・設備が必要不可欠である。

以 上




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