中部弁護士会連合会

中弁連からのお知らせ

自然公園の持続可能な利用と環境保全のための法整備等を求める宣言

自然は、人をはじめ生きとし生けるものの母胎であり、気候、地形、土壌、水、動植物などの微妙な相互作用によって調和を保っている。この神秘に満ちた自然景観を保護し、私たちの子孫に残すため、70年前に国立公園が誕生した。

中部地方では、中部山岳国立公園、白山国立公園をはじめ、多くの自然公園(国立公園、国定公園、県立自然公園)があり、その急峻な山容や、今も残る原生林と渓谷が風景美を織り成し、多様な野生生物の生息地になっている。

しかし、高度成長に伴い観光が大衆化・大量化すると、自然公園にも観光の波が押し寄せ、乗鞍、上高地では観光シーズンに人が溢れ、自動車渋滞を招いた。また、利用者の急増は、登山道の崩壊、高山植物の踏み荒らし、ゴミの発生など環境破壊を招いた。さらに、低地の動植物が高山帯にまで侵入してきたり、ライチョウも減少するなど生態系への影響も現れている。

これら過剰利用に対応するため、乗鞍では2003年(平成15年)からマイカー規制と環境保全税を導入、上高地においては1975年(昭和50年)からマイカー規制を実施し、今年から夏季の観光バス規制も始めた。しかしながら、車両規制は一時的な渋滞解消・排気ガス対策にはなるが、抜本的な対策になっているとは言い難い。適正な利用を確保し、公園利用の一極集中化を解消するには、利用者の多様なニーズに応え、体験・交流の場を整備し、利用の分散化を図りつつ魅力ある自然公園にしていく必要がある。

近年、生物多様性の保全が重視されるようになったことから、優れた自然の風景地の保護と、利用の増進を目的としてきた自然公園法も2002年(平成14年)に改正され、自然公園の風景地保護のために生物の多様性の確保を明記し(3条2項)、利用調整地区制度などを創設した。

しかし、改正法も生物多様性の保全を直接の目的としておらず、利用調整地区の指定も、知床など一部で検討されるにとどまっている。

生物の多様性の保全を一層図っていくためには、これまでの利用重視の法制度及び運用の抜本的な転換を図る必要がある。

そして、地域の持続的な発展に寄与するためには、自然公園の利用と管理の適切な情報収集と情報公開を行い、地域住民や公園利用者の意見を反映し、地域が一体となった自然公園の計画・管理を行なっていかなければならない。

よって、当連合会は国及び関係自治体に対し、次の施策を求める。


  1. 自然公園法を、生物及び生態系の多様性の確保を主たる目的とするものに改正し、その目的にしたがって地域性(ゾーニング)を見直すこと。
  2. 乗鞍岳、上高地、立山など過剰に利用されている地域は早急に実態調査を行い、利用調整地区の指定も含めた、適切かつ必要な措置を講ずること。
  3. 地域に貢献する体験型・交流型の利用を図る公園計画を策定し整備すること。
  4. 公園計画策定について広く住民参加を取り入れるとともに、自然公園ごとに地域住民・NNPO・学識経験者をも構成員とする、県域を越えた公園管理委員会を創設すること。

当連合会は、自然公園の持続可能な利用と環境保全の実現をめざし、 以上のとおりここに宣言する。

以上、宣言する。

2004(平成16)年10月15日
中部弁護士会連合会



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