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運転開始から40年を超える原子力発電所の再稼働に反対する理事長声明

東京電力福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」)事故から10年が経過した。同事故による被害は、広範囲にわたり深刻で、重大な人権侵害をもたらした。現在も、同事故の賠償は十分に進まず、故郷、住み慣れた場所を追われて避難を余儀なくされている人は多数にのぼり、復興庁の調査でも、この9月9日現在、自県外への避難者数は、福島県からは27,964人とされている。

当連合会は、福島第一原発事故後の2012(平成24)年6月9日、「確実な安全性が確保されない限り、大飯原発など停止中の原子力発電所の再稼働を許さない」という理事長声明を発出している。

福島第一原発事故後の2012(平成24)年6月、同事故の教訓を踏まえ原子力発電所の運転期間は原則40年とされ、例外的に1回に限り最長20年の運転延長が認められる法改正が行われた。当時の担当大臣は国会でこの法改正について、中性子照射による脆化の問題などが40年を原則とした根拠と指摘したうえで、延長が認められるのは例外的な場合に限られると答弁した。

そして、福井県高浜町にある関西電力高浜原子力発電所1号機及び2号機、同県美浜町にある関西電力美浜原子力発電所3号機は、それぞれ運転開始から40年を経過したが、20年の運転期間延長認可が既に出され、美浜3号機は2021年6月23日、全国で初めて40年を超えて延長運転がなされた(法令上設置が義務付けられている特定重大事故等対処施設の設置が期限までに間に合わないとして、同年10月23日に運転が停止されたが、同施設を完成させ2022年10月中旬に再稼働が予定されているとのことである。)。上記3原発の他の原発も順次再稼働が計画されている。

40年を超える原発については、安全性に大きな懸念がある。運転期間延長の可否は「実用発電用原子炉の運転の期間の延長の審査基準」に基づき審査されるが、一連の審査においては、そもそも設計や材料自体が古い等の深刻な問題が等閑視されていることのほか、長期の運転による核燃料からの中性子照射に伴う原子炉容器の脆化問題も指摘されている(高浜原発1号機に関して特に深刻とされる)。原子炉容器は取り換えることができないものであるが、脆化が進行すると原子炉を冷却する事態が生じた場合に、原子炉容器自体が破損し大量の放射性物質が漏出する重大事故につながるおそれがある。この中性子照射脆化に関する審査基準については、60年時点の脆化進行に関する予測式が理論的におかしいとか、運転後30年目に行った予測の結果と40年目に行った予測の結果に大きな違いが生じるなど専門家からも重大な問題点が指摘されている。安全性審査の基準は精査されるべきであるが、このような審査基準、内容を前提とする限り、いずれの原発においても、60年にも及ぶ運転には安全性に重大な懸念がある。ちなみに、美浜3号機では、2004年8月9日、老朽化した配管が破裂して高温の蒸気が噴出し、11名が死傷する事故が発生している。

なお、上記3原発について言えば、敷地外へ放射能が漏れた場合の避難計画についても実効性のある計画が整備されているとは言い難く、この点からも上記3原発の再稼働は許容できない。

当連合会は、40年を超える原子力発電所の再稼働について、現状の審査基準、内容を前提とする限り、安全性に重大な懸念があり、福島第一原発事故のような重大な人権侵害をもたらす可能性を否定できない以上、40年を超える原子力発電所の再稼働をしないことを求める。



令和3年12月8日

中部弁護士会連合会

理事長 山 下 勇 樹

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