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各人権条約に基づく個人通報制度の早期導入
及びパリ原則に準拠した政府から独立した
国内人権機関の設置を求める決議

 当連合会は,政府及び国会に対し,わが国における人権保障を推進し,国際人権基準の実施を確保するため,2008年の国際人権(自由権)規約委員会の総括所見をはじめとする各条約機関からの相次ぐ勧告をふまえ,国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度の導入及び国連の「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)」に合致した,真に政府から独立した国内人権機関の設置を強く求める。

 以上のとおり、決議する。

        2013(平成25)年6月15日


中部弁護士会連合会

決 議 理 由

1 個人通報制度について
 個人通報制度とは,人権条約の人権保障条項に規定された人権が侵害されているにも拘わらず,国内での法的手続を尽くしてもなお人権救済が実現しない場合,被害者個人等が各人権条約の定める国際機関に通報し,救済を求める制度である。この個人通報制度を実現するためには,各条約の人権保障条項について個人通報制度を定めている選択議定書等を批准するなどの手続が必要である。
 残念ながら,日本の裁判所は,人権保障条項の適用について積極的とはいえず,民事訴訟法の定める上告の理由には国際条約違反が含まれず,国際人権基準の国内実施が極めて不十分となっている。
 そのため,各人権条約における個人通報制度が日本で実現すれば,被害者個人が各人権条約上の委員会に見解,勧告等を直接求めることが可能となり,日本の裁判所も国際的な条約解釈に目を向けざるを得ず,その結果として,日本における人権保障水準が国際基準にまで前進し,また憲法の人権条項の解釈が前進するなどの著しい向上が期待される。


2 国内人権機関の設置について
 国連決議及び人権諸条約機関は,国際人権条約及び憲法などで保障される人権が侵害され,その回復が求められる場合には,司法手続よりも簡便で迅速な救済を図ることができる国内人権機関を設置するよう求めており,世界では,既に120ヶ国以上で国内人権機関が設けられている。
 日本に対しては,国連人権理事会,人権高等弁務官等の国連人権諸機関や人権諸条約機関の各政府報告書審査の際に,早期にパリ原則に合致した国内人権機関を設置すべきとの勧告がされている。
 日本政府は,本年3月14日の国連人権理事会でも,国内人権機関の設置勧告をフォローアップすることを表明したが,その後も,国内人権機関設立に向けた動きはなく,同年5月17日に公表された国連の社会権規約委員会による政府報告書に関する総括所見においても,再び同様の勧告がされている。
 国内人権機関を設置する場合,1993年12月の国連総会決議「国内人権機関の地位に関する原則」(いわゆる「パリ原則」)に沿ったものである必要がある。具体的には,法律に基づいて設置されること,権限行使の独立性が保障されていること,委員及び職員の人事並びに財政等においても独立性を保障されていること,調査権限及び政策提言機能を持つことが必要とされている。
 この点,現在わが国には法務省人権擁護局の人権擁護委員制度があるが,独立性等の点からも極めて不十分な制度である。また,日本政府が2012年11月に国会に提出した「人権委員会設置法案」も,独立性の確保が不充分である等の問題点が指摘されている。日本弁護士連合会は,既に2008年11月18日に,パリ原則を基準とした「日弁連の提案する国内人権機関の制度要綱」を発表しており,その趣旨を生かした国内人権機関の速やかな設置が求められている。


3 結 論
 当連合会は,政府及び国会に対し,日本における人権保障を推進し,また国際人権基準を日本において完全実施するための人権保障システムを確立するため,国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度を一日も早く採用し,パリ原則に合致した真に政府から独立した国内人権機関を速やかに設置することを強く求めるものである。

以 上




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