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平成22年度「事前研修」 課題

  1.民事弁護講義課題

(1) 訴 状
 下記設問のワードファイル

 平成22年10月,甲野太郎弁護士のところに「三の丸信用組合」の担当者が相談にきました。以下の説明のとおり顧客である「ジップ株式会社」に貸し付けた貸付金の返済が滞っているとのことです。甲野太郎弁護士の立場に立って,何をすべきか検討して下さい。なお,事前研修当日は,若干の資料を追加で配布した上で,訴状を起案していただきます。

【三の丸信用組合担当者の説明】
 ソフトウエア製作会社の「ジップ株式会社」に,一昨年の12月20日に180万円を融資しました。貸付条件は,利息8%,返済期間3年間の元金均等返済です。ジップ株式会社の代表取締役である刈田兼男が連帯保証人になっています。不動産は担保にとっていません。融資の際に金銭消費貸借証書(別紙)を作成し,返済計画表(別紙)を手渡しています。
 昨年1月〜3月分は返済計画表のとおり返済してもらったのですが,4月27日返済分の口座からの引き落としができませんでした。でも,そのときは,連絡したら「ちょっとした手違いですみませんでした」と言われ,すぐ5月1日に支払日までの利息を含めて支払ってくれたので,それほど心配していませんでした。その後,5月から7月分はきちんと返済があったのですが,8月分から全く返済がなくなってしまいました。返済の状況は,別紙返済状況一覧のとおりです。連絡すると,「すぐ払う」と言うので,付き合いの関係もあり,ついそのままになっていました。
 ところが,今年の3月上旬に連絡したところ,「今は,ちょっと払えない。そもそも,以前,うちの会社がおたくの組合のホームページを作成した時の代金のうちの一部(50万円)をもらっていないから,それで一部相殺できないか。」と言ってきたのです。
確かに,私の組合は,平成16年8月23日に,ジップ株式会にホームページ作成の依頼をしました。三の丸信用組合のホームページを,200万円で制作してもらう内容の契約でした。ジップ株式会社は,平成16年10月1日,ホームページを完成させ,サイトに公開しました。しかし,思ったほどの出来映えではなかったので,私の組合は,ジップ株式会社と値引き交渉をして,平成16年10月5日,200万円のうちの50万円については,減額に応じてもらいました。値引き後の金額である150万円は,平成16年10月6日,ジップ株式会社に支払いました。
それまで待っていたのに,このようなことを言われたのがちょっと心外で,きちんと請求しようとその後何回か電話しましたが,それ以来応答がありません。
そこで,今年の7月頃,岐阜弁ビル505号にある「ジップ株式会社」を訪問してみましたが,応答が有りませんでした。賃借物件でしたので,事務所の大家に聞いてみたら,ここ数ヶ月賃料の支払いがなく困っているとのことでした。
 刈田の自宅を訪問したところ,生活している様子はあるものの,何度呼びかけても答えがありません。刈田の自宅は刈田の自己所有で,抵当権が設定されていますが,もしかしたら余剰があるかもしれません。刈田は妻と離婚するらしいとのウワサも耳にしました。離婚に際して自宅の名義を妻に変更してしまうかもしれません。

 なんとかうちの貸付金が回収できるようにお願いします。

【別紙】(いずれもPDFファイル)
 金銭消費貸借証書返済計画表返済状況一覧

(2) 保 全
 下記設問のワードファイル

 以下の事案をよんで,各自設問を検討してください。 ただし,(1)本日は,平成21年10月22日であるものとします。(2)レポートの提出は求めません。

(事案)
 平成21年10月22日,弁護士であるあなたのところに,三の丸株式会社の担当者が訪れ,次のような事情を話し,相談しました。

1 当社は,建築資材の販売等をしている会社であり,株式会社愛弁工務店とは5〜6年のお付き合いになります。契約書は作っていませんが,電話やFAXなどで注文があり,指示された現場に建築資材等商品を納め,請求書を送付します。毎月末日締め,翌月20日支払で,これまでは特にトラブルはありませんでした。

2 折からの建築不況もあってか,特にここ1年は愛弁工務店からの支払いが遅れることが出てきました。しかし,遅れながらもきちんと支払いはありましたし,このような景気で,お互いに苦しいことはわかっていますので,うるさくは言いませんでした。

3 ところが,平成21年8月20日には,7月末締め分の100万円の支払いが全くなく,翌月の9月20日も,8月末締め分150万円の支払がないまま,過ぎてしまいました。さすがに今までこのようなことはなかったので,愛弁工務店の社長である愛弁一男氏に電話し,支払いを催促したところ,「もうすぐ工事が終わる現場があるので,必ず支払うから少し待ってほしい。」と言われ,9月末まで待つことにしました。
 また,他の業者などにも聞いてみたところ,あちこちの取引先に対する支払いも遅れているようで,危ないという噂も聞かれました。

4 心配していたとおり10月に入っても支払いはありませんでした。愛弁工務店に何度電話しても社長はいないと言うので,数回会社を訪ねてみましたが,アルバイトの事務員が出て「社長は不在でわからない。」と言うばかりで話になりません。

5 愛弁工務店社屋の土地・建物は社長個人名義になっていますが,愛弁工務店の借入金について取引先銀行の多額の抵当権が設定されており,価値はなさそうです。
 また,愛弁工務店が請け負っている工事で比較的大きいものに,名古屋市緑区の名古屋太郎様邸の改修工事があります。昨日,現地を見に行きましたが,現場に立ててあった看板の記載によれば,工期は「自9月1日〜至10月31日」で,ほぼ工事は終わっている状態でした。施主の名古屋太郎さんの奥様が出てこられたため,「愛弁工務店でリフォームをしようと考えているが,こちらのお宅もそうだと聞いて参考に見に来た。」と言って,それとなく聞き出したところ,工事代金は総額1000万円だそうです。工事費は,慣習的に契約時や中間時などに分けて支払われますので,完成時に支払う残代金は3割程度は残っていると思われます。

6 結局,10月20日支払分50万円の支払いもなかったため合計300万円の売掛金が未払いのままです。

当社の売掛金を何とか回収できないでしょうか。

 

【別紙 担当者が持参した資料】(いずれもPDFファイル)
 請求書(控)  土地全部事項証明書  建物全部事項証明書
 履歴事項全部証明書(2通)

 

設問1 三の丸株式会社の売掛金を保全するために,どのような保全申立をすることが考えられますか。

設問2 設問1のような保全申立をすると,どのような法律上の効果を得ることができますか。

設問3 今回の研修の予習として,設問1で検討した保全申立書を起案してみて下さい。なお,研修において申立書の提出は不要です。
※保全申立書の書式は,各種参考書のほか,裁判所のホームページなどにも記載されていますから,参考にして下さい。

設問4 設問3の申立書に添付して提出すべき証拠などの必要書類にはどのようなものがありますか。弁護士としては,【別紙 担当者が持参した資料】以外に,どのような資料を収集し,裁判所に提出する必要がありますか。

設問5 設問1の申立をしたところ,裁判所から,「5日以内に担保として80万円を提供して下さい」と指示がありました。

  1. ここで裁判所が言う「担保」とは,どのような法的性質のものですか。
  2. 具体的には,どのような手続をして当該担保を「提供」したら良いですか。
  3. 依頼者から「この『担保』は,戻ってくるお金ですか。戻ってくるとすれば,どのような手続で戻ってきますか」と聞かれたら,弁護士としてはどのように回答したら良いですか。

設問6 裁判所から設問1で検討した保全命令が発令されました。

  1. 当該保全命令の効果を実現するために,何らかの手続を採る必要がありますか(保全執行の申立の要否)。
  2. 本案判決で勝訴判決が確定した後,どのような手続によって権利を実現することができますか。

以上

  2.刑事弁護講義課題

(1) 接見実務
 下記設問のワードファイル

 以下の【事案】を読んで,【設問】に対する回答を考えて来てください。なお,レポートの提出は求めません。当日は考えて来た回答メモなどを持参してください。

【事案】
 平成22年10月15日(金)夕方,法テラスから甲弁護士の事務所に,被疑者国選弁護事件担当依頼書がFAXされて来た。被疑者はA,罪名は強盗殺人・死体遺棄。一緒にFAXされて来た勾留状謄本によると,被疑事実の要旨は,次のとおりだった。
「被疑者は,Bと共謀の上,

1 かねてから400万円を借り受けていた女性Vを殺害し,その返済を免れようと企て,平成22年9月24日午前3時20分頃,愛知県××市…××公園××駐車場において,殺意をもってVの頭部を所携の金属製パイプで殴打し,さらにBがVの頭部を所携のけん銃で撃ち,即時同所において頭部射創等による脳挫滅により死亡させ

2 殺害したVの死体を平成22年9月24日同時刻ころ同所西側法面に放置し,木枝をその身体に覆う等して隠蔽し,もって死体を遺棄し

たものである。」

甲弁護士は,法テラスに受任承諾のFAXを返送し,勾留場所の警察署留置管理係に電話した。留置管理係の警察官からは,検察官からFAXで指定書を送ってもらって来て下さいと言われ,甲弁護士は,主任検事に電話した。そして,主任検事より,接見時間を2日後の10月17日(日)午後2時から3時までの30分間と指定された指定書のFAX送信を受けた。
 甲弁護士は,指定書を持参の上,10月17日(日)午後2時頃から30分間,勾留場所の警察署内の接見室でAに接見した。甲弁護士がAから事情聴取した内容は概略,次のとおりだった。
 「共犯者Bと一緒にある女性Vを殺害し,その死体を遺棄したのは間違いありません。Bから殺しの手伝いを頼まれ,断れませんでした。BがVから借金をしていたようなのですが,自分はそのことは知りませんでした。死体を遺棄した後,Vの所持品を取得しましたが,それは,たまたま現場までVを乗せていった自分の車の中にVが置き忘れていたものでした。」
 甲弁護士は,Aに対し,「供述調書の内容をよく確認し,間違いがないかよく注意するように。もし間違っていたら,その部分を訂正してもらうように。」と注意し,弁護士会のリーフレット(A4・1枚のもの)を差し入れて帰った。

 

【設問】

1 甲弁護士の初回接見の次の点に不十分な点,問題点はありますか。あるとすれば,どうすべきでしたか。

  1. 初回接見の時期
  2. 検察官からFAXで指定書を送ってもらった点
  3. 接見時間

2 甲弁護士の初回接見時のAに対する説明,助言等に関し,次の点に不十分な点,問題点はありますか。あるとすれば,どうすべきでしたか。

  1. 接見の際に持参し差し入れた物
  2. 被疑者の権利についての説明
  3. 今後の刑事手続についての説明
  4. 被疑者の権利行使についての助言

3 甲弁護士は,初回接見以降,どのようなことをすべきですか。次の視点から考えてみてください。

  1. 被疑者に不本意な調書が作成されないためにはどうしたらよいか
  2. 被疑者に不本意な調書が作成されてしまった場合に備えてどうしておくべきか

(2) 被疑者弁護・弁論要旨
 下記設問のワードファイル

秋山康弁護士の立場に立って,以下の設問に答えて下さい。

 

(小問1)
秋山弁護士は,被疑者岩川哲(いわかわさとし)に対する詐欺被疑事件の国選弁護人に選任されました(被疑事実は別紙勾留状謄本のとおり)。秋山弁護士は,早速,被疑者に接見し,被疑者弁護活動を開始しました。平成22年8月26日までの接見等の経過は下記【経過1】のとおりです。秋山康弁護士の立場に立って,被疑者弁護における今後の弁護方針を検討してください(この課題については,特にレポートの提出や当日の起案は求めません。)。

(小問2)
秋山弁護士の活動もむなしく,被疑者は起訴され,第1回公判期日が平成22年10月19日に指定されました(起訴内容は別紙起訴状のとおり)。検察官より開示された証拠は別紙検甲及び乙号証のとおりであり,起訴後から平成22年10月6日までの接見等の経過は下記【経過2】のとおりです。引き続き,被告人国選弁護人に選任された秋山弁護士の立場に立って,今後の弁護方針を検討してください。なお,事前研修当日は,その後の弁護活動の資料を追加で配布した上で,弁論要旨を起案していただきます。

【経過1】
8月22日 被疑者接見
・被疑事実に間違いはない。
・店の人に代金の支払を請求され,妻のへそくりのことが頭に浮かんだ。家に案内して,そのへそくりで払おうと思った。食べ物を注文する時には,空腹でそこまで頭が回らず。へそくりの具体的な場所や金額は今もわからない。
・警察には自ら連絡した。警察官を呼んだのも自分。家にも自ら案内した。
・しかし,家には結局お金はなかった。
・お金はほとんどない(150円くらい)。
・被害弁償は出来ない。妻に連絡すれば出来るかもしれない。
・しかし,妻は現在妊娠中。子供が生まれているかもしれない。
・子供が生まれているかどうかを教えてほしい。
・できれば,下着の差し入れがほしい。
・妻には本当にごめんなさいと伝えてほしい。
・調理師の免許があり,以前日本料理店で働いていたが,今年の3月に辞めて今は無職。
・かなり反省している様子。もう二度としないと誓約。

同日 被疑者の妻へ連絡
・すでに子供は生まれている。
・名前は美月(みつき)。
・まだ実家であるが,10月上旬くらいに名古屋に戻る予定。
・両親とも話をして,今後のことを決めたい。

8月25日 捜査担当検事に電話
(内容省略)

8月26日 被疑者接見
・前日に妻から手紙が来た。
・離婚の話も書いてあった。妻の両親がかなり怒っているらしい。妻は,子供を出産後直ぐなので面会には来られないとのこと。
・妻は迷っている感じだった。
・借金は結構前から。もしかしたら,過払いが出ており,債務整理可能かも。
・生まれてきた子供のために,もう一度しっかり働いてやり直したい。
・調理師免許があるので,資格を生かして働きたい。
・借金も,弁護士さんにお願いをして債務整理をし,きちんと払っていきたい。
・母・姉とは音信不通。

8月29日 電話にて妻と打ち合わせ
(内容省略)

8月30日 被疑者接見
(内容省略)

9月6日 被疑者に呼ばれ,被疑者接見
(内容省略)

【経過2】
9月21日 被告人接見
・警察,検察の調書にも間違いはない。
・前の店にもう一度雇ってくれないか頼んでほしい。
・妻にももう一度やり直したいと頼んでほしい。

10月1日 「柔」(前の就労先へ連絡)
・雇うことはできない。
・ただ,彼は料理人としての腕はあるので,どこか雇ってくれることはあるはず。
・紹介することはできるかもしれない。

10月6日 被告人接見
・もし前の職場が働き口を紹介してくれるなら,どこにでも行く。

別紙
 勾留状  起訴状  被害届(検甲1)  被害者のKS(検甲2)
 被告人のKS(検乙1)  被告人のPS(検乙2)  前科調書(検乙3)





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