中部弁護士会連合会

中弁連からのお知らせ

立憲主義と基本的人権尊重原則の堅持を求める宣言

近年、政党、経済界、新聞社などから、相次いで憲法改正に関する見解や、改憲案等が発表され、憲法改正に向けた議論がなされている。これらの改憲論には、憲法の基本的人権尊重原則に関わるものがある。

日本国憲法は、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」(11条)、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」(97条)と定め、基本的人権の尊重原則が、憲法改正によっても変えることのできない根本規範であることを明らかにしている。

また、日本国憲法は「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」(13条)と定め、基本的人権の根底には個人尊重の理念が存在し、国政において実現されるべき究極的な価値が個人の尊厳に由来しており、基本的人権が全体の利益や多数者の決定によって侵すことのできない本質を有することを明らかにしている。

日本国憲法の基本的人権尊重の原則は、人権保障のために国家権力を制限する立憲主義の普遍的理念を継承するものである。

しかるに、上記した改憲論には、憲法を権力に対する制限規範にとどめずに国民の行為規範としようとするものや、国民の責任や義務を強調するもの、個人の尊厳を超える全体の利益を想定する「公益」や「公の秩序」による人権制限を加えようとするもの、伝統・文化・歴史など日本に固有の価値を憲法に明記しようとするものなどがある。

これらは、立憲主義の理念、個人の尊厳、さらには全体の利益や多数者の支配から少数者を保護するという人権の本質に反し、基本的人権の保障を後退させ、変質させるおそれがある。

基本的人権の擁護を使命とする当連合会は、立憲主義と基本的人権尊重の原則を堅持することを求め、基本的人権の保障を後退させる改憲論に反対する。

以上、宣言する。

2006(平成18)年10月20日
中部弁護士会連合会



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