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公文書管理の徹底を求める決議

加計学園獣医学部新設に関わる文書、森友学園の交渉記録、陸上自衛隊の日報と、本来「公文書」として保管されるべきはずの文書が「不存在」とされた問題が、昨年から今年にかけて、かつてないほど明るみに出ている。そして、ついには、公文書の不当破棄や改ざんまで明らかとなった。

しかし、民主主義は、国民の間に情報の流通を円滑に行うことで、国民の政治参加を担保することを基本とする。そして、そのためには、公の情報が的確に保管され、保管された情報が国民に開示され、国民がその情報を受け取ることができる権利、すなわち、知る権利が国民に保障されることが必要不可欠である。従って、公文書管理と情報公開制度は「知る権利」の実現のための車の両輪であり、公文書の管理は「知る権利」を根底から支えるものとして、民主主義の基本を支えるものである。

また、行政運用にとっても、公文書が管理されることは、行政機関がその諸活動を現在および将来の国民に説明する責務を果たすため、また将来の政策遂行のため、なくてはならないものである。

しかし、公文書管理の現状には、以下に示すように少なくとも4つの大きな問題が存在する。


(1) 公文書管理法における行政文書の定義が不適切であること

公文書管理法および情報公開法では、行政機関において「組織的に用いる」文書(組織共用文書)を公文書とする要件が定義に含まれている。しかし、これを不当に限定的に解釈し、本来公文書として管理すべき文書が職員の「私的メモ」であるとして破棄されたり、情報公開の対象から外されているという実態が存在する。


(2) 国民の目に触れることなく廃棄される行政文書が多量に存在すること

公文書の保存期間は一応法令で類型化して規定され、ガイドラインも制定されているものの、具体的にそれぞれの文書がいずれの区分に該当するかは行政機関の運用次第であるため、本来長期間保管すべき公文書の保存期間を一年であるとしたり、行政文書の保存期間を一年未満とすることで、行政文書ファイル管理簿に記載されることなく、短期間で文書が廃棄されるといった運用が、広汎に行われている。こうした運用が、行政機関による情報隠しの温床となっている。

また、特定秘密については、一部の例外を除き、特定秘密の指定期間中に保存期間が到来した文書については、一度も開示されることなく破棄することが可能になっている。


(3) 公文書の管理体制をチェックするシステムが存在しないこと

現行の公文書管理法においては、行政文書が改ざんされるという事態を想定しておらず、これを防ぐための規定を何ら有していない。昨今の事例で、公文書が改ざんされる危険が顕在化した以上、これを禁止するとともに、第三者がチェックできるシステムを公文書管理法に定めることが重要と考えられる。


(4) 地方公共団体において公文書管理条例が整備されていないこと

地方公共団体のうち公文書管理条例が制定されているのは、ごくわずかであり、多くの地方公共団体は、規則、要綱などで文書管理をルール化しているに過ぎない状況である。しかし、公文書の保存、開示が民主主義の要をなすものである以上、条例によって公文書管理を徹底するべきである。

こうした問題は、公文書の管理が国民のためにある、という点が意識されてこなかったことに、原因する。そこで、公文書の管理について、以下の(1)ないし(3)については国に、(4)については地方公共団体に対し、それぞれ必要な立法措置を求めることをここに決議する。

(1)  公文書は国民のものであるという趣旨を実現するよう、公文書管理法において、本来公文書として保存、開示されるべき文書が私的メモという名の下、不開示とされたり、不当に破棄されることのないよう、公文書の定義から組織共用文書の要件(「組織的に用いるもの」)を外すなど、公文書性を明確化すること。

(2)  公文書の保存期間を一年未満に設定できる場合をガイドラインではなく公文書管理法で具体的・限定的に列挙すること。また、特定秘密に指定された文書については、歴史的公文書として原則保管文書とすること。

(3)  公文書の不当な破棄や改ざんを第三者がチェックできるシステムを公文書管理法に定めること。

(4)  地方公共団体に公文書管理法についての上記要請を踏まえた行政文書管理条例を制定すること。

以上



2018年(平成30年)10月19日
中部弁護士会連合会

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