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名古屋高裁金沢支部大飯原発3、4号機差止訴訟判決に関する理事長声明

名古屋高等裁判所金沢支部は、2018年7月4日、福井地方裁判所が2014年5月21日に言い渡した、関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)に対し大飯原子力発電所(以下「大飯原発」という。)3号機及び4号機の原子炉の運転差し止めを命じる判決(以下「原判決」という。)につき、原判決を取り消し、住民らの請求を棄却する判決を言い渡した(以下「本判決」という。)。

本判決は、福島第一原発事故の深い反省のもと、国民の生存を基礎とする人格権に基づき国民を原発の危険から守るという観点から司法の本来あるべき役割を果たした原判決を取り消したものであるが、その内容は、原子力規制委員会や事業者である関西電力の主張を追認するものであり、およそ福島第一原発事故の深刻かつ甚大な被害を踏まえたものとは言い難い。

当連合会は、2012年の大飯原発再稼働の際、同原発の安全性が確保されていないことから、その再稼働に反対する理事長声明を公表した。また当連合会は、2013年に福井市で開催された中部弁護士会連合会大会の宣言において、裁判所に対し、原発訴訟においては、行政庁や事業者の主張を追認するだけで科学的専門性に踏み込んだ十分な審理が行われなかったことを真摯に反省し、原告住民側の立証責任の軽減など審理方法の改善を図るよう求めた。

しかし、本判決は、このような当連合会の声明や宣言の指摘するような検討がされたのかどうか極めて疑問の残るところである。本判決は、「具体的審査基準に適合しているとの判断が原子力規制委員会によってされた場合は」具体的審査基準に不合理な点があるか、あるいは原子力規制委員会の判断に不合理な点があると認められるのでない限り、「周辺住民等の人格権を侵害する具体的危険性はないものと評価できる」としている。また、「新規制基準について、明らかに不合理な点がない限り、その内容を尊重するのが裁判所としてふさわしい態度といえる」とも述べている。このような福島第一原発事故以前と何ら変わらない行政庁の判断への追随姿勢は、新たな安全神話を裁判所自身が作り上げるものともいえ、万が一にもあってはならない原発事故災害が危惧されるものである。

以上のとおり、本判決は中弁連宣言が求めたような適切な審理をしておらず、不当であり、当連合会は、国及び事業者に対し、本判決が大飯原発の安全性を認めたと安易に考えることなく、本判決も原判決と同様に地震の予知予測についての限界を肯定していること等を真摯に受け止め、安全審査及び審査の在り方を抜本的に見直し、万が一にも福島第一原発事故のような重大な災害を発生させないよう確実な安全性が確保されない限り、原子力発電所を稼働をしないよう強く求めるものである。


2018年(平成30年)9月28日



中部弁護士会連合会
  理事長 池田 桂子




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