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安全性を確保しない新規制基準に基づく
原子力発電所の運転を許さない決議

中部弁護士会連合会は、2012(平成24)年6月9日に「確実な安全性が確保されない限り、大飯原発など停止中の原子力発電所の再稼働を許さない声明」を公表した。この声明では、未だに福島第一原子力発電所事故(以下「福島原発事故」という。)の原因や発生機序すら解明されていないこと、福島第一原子力発電所では想定した地震が過小であり、耐震設計の解析に不備があったこと、地震・津波による共通原因故障及び全電源喪失事故発生の危険性やシビアアクシデント(過酷事故)等の対策が不十分であったことといった問題があり、これらの問題点が全く解決されていない状況の中で原子力発電所の再稼働を行ってはならないことを求めた。しかし、これらの問題点の多くは、現在でも解決されていない。

また、2014(平成26)年5月21日に福井地方裁判所が言い渡した、大飯原子力発電所3、4号機の原子炉について運転差し止めを関西電力株式会社に命じる判決、及び2015(平成27)年4月14日に同裁判所が出した高浜原子力発電所3、4号機の原子炉について運転差し止めを同社に命じる仮処分決定は、基準地震動の策定基準が基本的には福島原発事故以前から変わっておらず、基準地震動を超える地震動が到来するおそれがあること、外部電源や主給水ポンプが基準地震動以下の地震動で損壊しうること、使用済み核燃料が堅固な容器に覆われていないこと等から、人格権侵害のおそれがあると判断した。しかし、これらの問題点は、未だに解決されておらず、福島原発事故後に原子力規制委員会が策定した規制基準(新規制基準)は安全性を確保するものではない。

にもかかわらず、政府や多くの電力会社は、新規制基準に適合した原子力発電所の再稼働を進めようとし、現に九州電力株式会社は安全性が確保されていないとの世論の反対にもかかわらず、2015(平成27)年8月11日に川内原子力発電所1号機を再稼働させ、運転を再開した。

2013(平成25)年秋以来川内原子力発電所1号機が再稼働するまでの間、我が国においては一基の原子力発電所も稼働していなかったが、電力不足は発生していない。化石燃料の輸入額増加も、その大半は為替レートの変動等によって、単位量当たりの単価がとりわけ円建てベースで高騰したことによる。

したがって、原子力発電所の停止に起因する電力不足やコスト高騰は生じておらず、これらの問題を理由に原子力発電所の再稼働を進めることにも根拠がない。

よって、中部弁護士会連合会は、深刻な原子力発電所事故被害の再発を未然に防止するため、次のことを求める。

  • 原子力発電所を保有する各電力会社は、その原子力発電所を稼働させてはならず、再稼働させている原子力発電所は直ちに稼働を停止すること。
  • 政府及び原子力規制委員会は、現在進めている原子力発電所の再稼働の政策を転換すること。
  • 政府及び関係機関は、再生可能エネルギーの割合を飛躍的に高める政策を進めること。

以上のとおり、決議する。



2015(平成27)年10月30日
中部弁護士会連合会





提 案 理 由


 1.新規制基準では、原子力発電の安全性を保証できないこと

(1) 福島原発事故の深刻な被害

福島原発事故が引き起こした深刻な被害は、既に誰の目にも明らかである。十数万に上る人々が、住み慣れた地を離れて避難することを余儀なくされた。多くの人が、職業を奪われ、故郷を奪われ、収入を奪われ、財産を奪われた。命を奪われた人もいる。被害者が、このような悲劇を甘受しなければならない理由は、どこにもない。このような事態を、二度と引き起こしてはならないことは、誰の目にも明らかである。


(2) 同事故が明らかにした旧規制基準の問題点

そして、福島原発事故は、原子力発電所に関する従来の「安全基準」が、全く安全を保障するに足りるものでなかったことを明らかにした。具体的に明らかになった不合理な安全指針類あるいは審査の誤りとして、例えば以下のことが指摘できる。

まず、立地評価の誤りである。立地審査指針は、原子力発電所に万が一の事故が起きたとしても、公衆の安全を確保するために、立地条件の適否を判断するための指針であるが、この目標を達成するために、重大事故の場合を想定して原子炉から一定の距離の範囲を非居住区域とし、さらに仮想事故(重大事故を超えるような、技術的見地からは起こるとは考えられない事故)の場合を想定して非居住区域の外側の一定の範囲を低人口地帯とすることにしている。しかしながら、福島原発事故では、仮想事故で想定した放射線量の1万倍もの放射性物質が検出され、極めて広範な居住圏が放射性物質に汚染された。従来の立地評価は、原発事故の被害に対して、まったく無力であった。

次に、共通要因故障を考えた設計になっていなかったことである。

安全設計審査指針において、重要な安全機能を有するものは二つ以上あり、一つの事故原因で同時に全ての安全機能が失われることがないことを前提に設計されていた。しかし、福島原発事故では、単一故障の仮定どおりに事は進まず、一つの原因で必要な安全機能が同時に全て故障した(共通要因故障)。地震・津波の自然現象を原因とする事故であれば、多数の機器に同時に影響を及ぼすことがあり得るのであるから、異常状態に対処するための安全機能を司る機器のうちの一つだけが機能しないという仮定は非現実的である。

そして、外部電源の重要度分類が最低ランクである。福島原発事故では、地震の揺れによる送電鉄塔の倒壊、送電線の断線、受電遮断器の損傷等により、冷却機能に不可欠な外部電源が喪失した。この事態を招来した原因は、外部電源の重要度が最低ランクであったからである。重要度分類指針は設備の重要度を3つのクラスに分け、重要度に応じて安全性の要求の程度を違えているが、外部電源は最低ランクに分類されていた。また、耐震設計上の重要度分類においても、Sクラス、Bクラス、Cクラスの分類のうち、最も耐震性の低い設計が許容されるCクラスに分類されていた。

そして、旧安全指針類では、東北地方太平洋沖地震を設計基準内の地震として想定出来なかった。この点について、中央防災会議はこう指摘している。「東北地方太平洋沖地震は、過去数百年間の地震では確認できなかった地震であり、このような地震を想定出来なかったことは、従来の想定手法の限界を意味している」「東北地方太平洋沖地震は、我が国の過去数百年間の資料では確認できなかった巨大な地震であり、過去数百年間に発生した地震・津波を再現することを前提に検討する従前の手法には限界がある。現時点の限られた資料では、過去数千年間の地震・津波の記録だけに基づく地震・津波の震度分布・津波高の推定は難しく、仮にそれを再現したとしても、それが、今後発生する可能性のある最大クラスの地震・津波であるとは限らないことを意味している」。つまり、これまでの想定手法では、原子力発電所で想定すべき地震、津波を想定できないのである。


(3) 新規制基準においても、上記の問題が手つかずであること

そして、福島原発事故後に策定された新規制基準は、本来であれば、同事故の教訓を踏まえ、万が一にもこのような重大事故を引き起こさないようなものでなければならない。

ところが、新規制基準においても、これらの問題は全く手つかずである。

まず、立地評価を改める基準が作られていない。これまでの原子力発電所の立地評価が誤りであることは、前原子力安全委員会委員長及び原子力規制庁が公に認めたことである。従って、周辺公衆の安全を確保するためには、少なくとも福島原発事故と同様の事故及び放射能の拡がりを想定して立地審査指針の離隔要件の判断をし直すように基準を改訂するべきである。しかし、原子力規制委員会は、立地審査指針による離隔要件については何ら言及していない。

また、福島原発事故に関わらず、共通要因故障を設計に導入していない。

原子力規制委員会の基準検討チームにおいて、当初は、同事故の反省から、「ただし、共通要因又は従属要因による機能喪失が独立性のみで防止できない場合には、その共通要因又は従属要因による機能の喪失モードに対する多様性及び独立性を備えた設計であること」という規則案が検討されていたが、現実の規則案にはならなかった。

外部電源についても、福島原発事故にもかかわらず、重要度分類、耐震重要度分類を変更していない。仮に外部電源2回線に独立性を要求しても、耐震性を高めなければ、地震により外部電源が同時損傷する事態は防げない。福井地方裁判所の2015(平成27)年4月14日決定が「安全確保の上で不可欠な役割を第1次的に担う設備はこれを安全上重要な設備であるとして、その役割にふさわしい耐震性を求めるのが健全な社会通念であると考えられる。このような設備を安全上重要な設備ではないとするのは理解に苦しむ主張であるといわざるを得ない」、「この脆弱性は(中略)A外部電源と主給水の双方について基準地震動に耐えられるように耐震性をSクラスにする(中略)ことによってしか解消できない」などと判断しているのも、上記のような事実が背景にあるからである。しかし、同決定の後においても、未だに見直しに向けた機運はない。

地震・津波の想定手法の見直しも不十分である。新規制基準では、従来の地震想定の考え方が間違っていたとの前記中央防災会議の考え方が反映された箇所が見当たらない。前記の福井地方裁判所決定における「万一の事故に備えなければならない原子力発電所の基準地震動を地震の平均像を基に策定することに合理性は見出しがたいから、基準地震動はその実績のみならず理論面でも信頼性を失っていることになる。」、「この脆弱性は、@基準地震動の策定基準を見直し、基準地震動を大幅に引き上げ、それに応じた根本的な耐震工事を実施する(中略)ことによってしか解消できない。(中略)原子力規制委員会はこれらの各問題について適切に対処し本件原発の安全性を確保する役割を果たすことが求められているが(設置法1条、3条、4条)原子力規制委員会が策定した新規制基準は上記のいずれの点についても規制の対象としていない」という判示は、従来における基準地震動の策定方法が福島原発事故を防げなかったという経験的事実や、纐纈氏・石橋氏をはじめとする我が国を代表する地震学者たちの理論的知見を踏まえた、きわめて科学的、常識的なものである。福島原発事故後において、同事故のような事態を防止できない判断基準は、行政においても、司法においても、採用されてはならない。

この他、新規制基準には、シビアアクシデント対策が不十分であるなど、数々の問題があり、およそ原発の安全性を確保するに足りるものではない。



 2.避難計画は新規制基準の対象外であり、しかも、現時点の避難計画の策定ないし実効性は極めて不十分であること

(1) 避難計画の重要性

国際原子力機関(IAEA)は、原子力の「平和的利用」を促進することを目的として設立された機関ではあるが、同機関すら、原発の安全性を保つため「五層の防護」という考え方を示している。

「五層の防護」とは、「人は誤り、機械は故障する」という当然の事実と、原子力発電所が事故を起こした場合の被害の重大性・深刻性を踏まえ、万が一にも事故が起こらないよう、何重にもわたって防護柵を講じることを指している。具体的には、故障や誤作動を防ぎ、地震や津波などに襲われても炉心溶融のような重大事故にならないよう備えをするのが一〜三層目、事故が起きてしまった場合、いかに事故の被害を最小限に食い止め、住民を被ばくから守るかの備えをするのが四層目(過酷事故への対応)、五層目(避難等)となる。

したがって、現実性・実効性のある避難計画は、原子力発電所の安全性を確保するため必要不可欠である。


(2) 新規制基準が避難計画を規制の対象外としていること

田中俊一原子力規制委員会委員長も、「地域防災計画は新基準と併せて原発の安全確保の車の両輪」と述べ(「平成25年2月13日原子力規制委員会記者会見録」1頁)、避難計画の重要性を認めているところである。

ところが、新規制基準においては、避難計画は規制の対象となっていない。

他方、基本的人権も絶対に無制約ではない。人が他者との関係なくして生存することはできない以上、人権も他者との関係で制約される余地があることは当然である。憲法は、このことを踏まえ「公共の福祉」による人権の制約を認めたのである。しかし、人権制約原理としての「公共の福祉」は、あくまでも人権相互の矛盾・衝突を調整するための実質的公平の原理に基づくものである。すなわち、「公共の福祉」とは、人権自体に内在する制約可能性を示すものにすぎず、外在的要因による人権制約を許容するものではない。

(3) 避難計画は未だ策定されていないか、実効性に欠けるものしか策定されていないこと

当連合会管内には、福井県の敦賀原子力発電所・美浜原子力発電所・大飯原子力発電所・高浜原子力発電所、石川県の志賀原子力発電所といった多くの原子力施設がある。

これらの原子力施設がもし事故を起こした場合、どのような事態となるか。

まず、避難路が限られている状況下では、渋滞等の発生により、最も避難しなければならない原子力発電所の近隣住民の避難が遅れるという問題の発生が予想される。

とりわけ福井県内の各原発の30キロメートル圏内の人口は、福島第一原子力発電所の30キロメートル圏内の人口に匹敵するが、福井県嶺南地方は東西に細長く、周囲を急峻な山地に囲まれている関係で、福島第一原子力発電所周辺に比して避難路が乏しく、南北方向の避難ルートは皆無に近く、東西方向の道路がいくつかある程度である。しかも、東西方向への避難とは多くの場合、他の原子力発電所に向かって避難することを意味する。そして避難路がいわゆる原発銀座沿いを通っていることから、住民は、避難計画により示された避難路を忌避することが予想され、結果、避難計画どおりの避難が困難となる。福井県は、2014(平成26)年3月に広域避難計画要項を策定し、おおい町は、2014(平成26)年11月に「原子力災害時における住民避難計画(案)」を策定しているが、バスによる避難等を内容とした同計画はむしろ、バスの数量の不足をはじめとした、避難の困難性を示すものとなっている。また、福井県が2014(平成26)年5月に作製した「医療機関における『原子力災害時避難計画』作成ガイドライン」の内容は、@連絡先一覧を作成し、備蓄品・非常持ち出し品リストを作成し、B避難先病院、避難手段、避難経路一覧を作成し、C原子力防災に関する行動チェックリストを作成する、といった程度のものであり、特に避難先への移動手段・移動経路については、「どこから」「なにを(バス、救急車等)」「誰が」「どうやって」確保するのかという肝心な点が策定されていない。上記の事情に鑑みれば、そもそも策定自体が不可能に近いといえよう。



 3.放射性廃棄物の最終処分方法や処分先等は解決の目途もたっておらず、原子力発電所の再稼働は将来世代に過大な負担を引き継がせる結果となること

また、仮に重大事故が発生しなくても、原子力発電所は、放射性廃棄物の処理という困難な問題を不可避的に発生させる。

高レベル放射性廃棄物は、何万年もの長期にわたり極めて有害な放射線を発生させる。

この点、政府の高レベル放射性廃棄物処分政策は、数十年間一時貯蔵した後、地下300メートルより深い地層中に埋設処分するという方法である。しかし、日本は、4つのプレートが複雑に重なり合う地球上でも最も地殻変動が活発な地域であり、日本列島のほぼ全域で地震が発生する世界有数の地震多発国である。そのため、国内には、数万年にわたり安定し、地層処分に適した地層が存在しない可能性が極めて高い。この点は諸外国とは大きく異なる点であり、他国で地層処分方法を採用していることは、我が国でも地層処分が可能であるという理由にはならない。

一方、原子力発電所の稼働により発生する放射性廃棄物は長期間にわたり極めて強い毒性を有するもので、国外で処分することには、倫理上重大な問題がある。

原子力発電所から発生するゴミの処分という問題は、特に我が国においては極めて困難な問題である。このことをもってしても、私たちは、将来世代に極めて大きな負担を強いる状況を既に引き起こしているということ、また、原子力発電所を稼働し続けることがどれだけ無責任極まりない行為であるかを認識しなければならない。

したがって、高レベル放射性廃棄物については、これ以上増やさない政策決定が早急に求められ、原子力発電所を稼働させず速やかに廃止し、放射性廃棄物の総量を確定させることは、将来世代の負担を軽減するためにも、最も必要かつ重要なことである。



 4.再生可能エネルギーの飛躍的導入

上記の理由により、福島原発事故に見られたような深刻な人権侵害を防ぐためには、もはや原子力発電所を稼働させてはならない。

一方、化石燃料の使用は、温室効果ガスの増大を招き、気候変動という重大な人権侵害を引き起こす原因となることから、これも抑制する必要がある。現在、先進諸国では、化石燃料の燃焼を伴わず、燃料費がゼロか少ない再生可能エネルギーを普及させて、その供給割合を増やす競争をしている。

したがって、天然ガスのコンバインド・サイクル(燃料を燃やすことによって得られる電気と熱の双方を同時に利用する)による利用の効率化など、エネルギー利用率の向上策に加えて、太陽光・地熱・風力・小水力・バイオマスなどの、再生可能な自然エネルギーを飛躍的に拡大する必要がある。

ところが、今年に入ってからの政府のエネルギー政策は、それに逆行するものとなっている。例えば、小売電気事業の登録の申請等に関する省令案において、小売電気事業者に対し、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」第8条第1項の交付金の交付を受けている再生可能エネルギー電気について、「グリーン」「環境になじんだ」等の表示を禁止することを計画していた。これは、消費者の知る権利を侵害するとともに、もともとの特別措置法にはそのような禁止が書いていないにもかかわらず、政省令で禁じるもので、憲法第41条が、立法機関が国会であると定めていることを無視するものである。そればかりか、原子力発電が経済的に成り立たないことが明らかになった今日、2016(平成28)年4月から導入される電力自由化の下で、高い原子力発電の価格と市場価格との差額を補填する差額決済制度のような経済的優遇制度すら図ろうとしている。

このような政策は、原子力発電を格段に優遇し、再生可能エネルギーを競争上劣位に置き、その普及を一層妨げるものであり、時代に逆行したもので、到底許容されるものではない。

なすべきことは、原子力発電に対する不当な優遇、再生可能エネルギーに対する妨害を直ちにとりやめ、地産地消の地域自立のエネギーとして重要な資源である再生可能エネルギーの利用を促進する制度を整備することである。

まず、国は、最終的には「再生可能な自然エネルギー100%」に向けての再生可能エネルギー導入計画を策定して、持続可能なエネルギー社会への道筋を明らかにする必要がある。現在の国のエネルギー基本計画(第4次計画)は、再生可能エネルギーについて、これまで示した水準〔2030(平成42)年において約2割〕を上回る水準の導入を目指すとしているが、先進的な他国の例と比較すると非常に低い水準であり、最終的に達成すべき数値目標、地域別・種類別(再生可能エネルギー別)の内訳が示されていない。

あわせて、再生可能エネルギーの利用を、その資源の特性に応じた、持続可能なものとし、地域の合意に基づき、地域の経済的自立が図られるよう制度的支援をすることが重要である。すなわち、再生可能な自然エネルギーのエネルギー源は太陽光、風、流水等であり、その賦存するところで、その発生時に利用し、輸送や貯蔵して利用するものでないことから、各地域においてその状況に即して利用する必要がある。このような自然エネルギーは、地産地消の地域エネルギーであり、地域の状況を十分に理解している地元住民、地元企業、自治体等が主体となって取り組むことが有効であり、普及の力になる。

また、持続可能なエネルギー社会を実現することの社会的議論を進め、再生可能エネルギー利用に対する社会的合意形成を進めていくことも重要である。そのため、再生可能エネルギーの普及に取り組む人材を社会科学系を含めて広げるとともに、将来世代の担い手である子どもに対する学校等における効果的な教育活動が必要である。



 5.結語

福島原発事故という大規模かつ深刻な人権侵害の発生にもかかわらず、政府、規制委員会、電力会社は、同事故の反省を踏まえた規制基準の十分な見直しを行うことなく、国民多数の反対の声を聞かず、いたずらに原子力発電所の再稼働を急いでいる。そして、九州電力株式会社は、安全性が確保されていないとの世論の反対にもかかわらず、2015(平成27)年8月11日に川内原発1号機について再稼働して運転を再開した。地域経済の観点からは、福井県南部をはじめとする原発立地地域において、これまで雇用の相当割合が原子力発電に関連してきたことは否定できないが、雇用の確保等は、別途、例えば「4」で述べたような政策的手当によって図るべきものであって、多くの人命を危険にさらす原子力発電所の再稼働のような手段によるべきではない。

よって、中部弁護士会連合会は、基本的人権を擁護する責務を負う法律専門家の団体として、本決議案を提案するものである。


以上

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