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被疑者弁護活動の一層の充実、質的向上をめざす宣言

 2006(平成18)年10月に導入された被疑者国選制度が、2009(平成21)年5月からその対象事件が大幅に拡大され、3年余り経過した。 被疑者には弁護人依頼権が保障され(刑事訴訟法30条1項)、身体拘束された被疑者の弁護人依頼権は、憲法上の権利である(憲法34条前段)。被疑者国選制度は、この憲法上の弁護人依頼権を、一定の事件についてより実質的に保障すべく導入されたもので、極めて重要な意義を有する。

 わが国の刑事司法は、しばしば調書裁判と評されてきた。捜査機関による被疑者取調べや供述調書作成を中心とした糾問的な捜査手続に刑事司法の実質があり、公判は、それを追認する場にすぎず形骸化・儀式化している。このように言われてきた。
近年次々と明らかになったえん罪事件のほとんどで、捜査機関による取調べにより無実の人が虚偽の自白に追い込まれている。わが国の糾問的な捜査手続は少なからぬ被疑者、被告人を不当な処罰に陥れてきた疑いがある。
 この点、2009(平成21)年5月から裁判員制度が導入され、裁判員裁判では直接主義・口頭主義が見直されつつある。裁判員裁判対象事件など一部事件で被疑者取調べの録画が行われる運用が開始されている。わが国の刑事司法に、近年、変化の兆しが一部には見られる。 しかし、それは未だごく一部に止まっている。
 令状主義は依然形骸化したままであり、被疑者の身体拘束や勾留期間延長も安易に認められている。接見等禁止決定が自白強要の事実上の手段として利用されている嫌いがある。被疑者取調べの録画も、一部事件における裁量的・部分的な運用にすぎず、われわれが求める取調べの可視化(全過程の録画)は未だ実現していない。
 調書裁判と評されてきたわが国の刑事司法の特徴、糾問的な捜査手続は、なお温存され、基本的なところで変化はない。わが国の捜査手続は、国際的にみても大きく立ち遅れている状況にある。
 このように、わが国の刑事司法において、被疑者、被告人が不当な処罰を受けることのないよう、不必要な身体拘束から被疑者を早期に解放すべく準抗告申立て等の権利を行使し、取調べや供述調書作成への対応の仕方、黙秘権、署名押印拒否権等を被疑者に説明、助言するなど、捜査段階の弁護人が果たすべき役割は極めて大きい。

 われわれは、被疑者国選制度の対象事件が大幅拡大されて3年余り経過した現在、被疑者、被告人が不当な処罰を受けることのないよう、そして、被疑者の権利保障が少しでも国際的な水準に達するよう、身体拘束されたすべての被疑者への被疑者国選制度の拡大、取調べの可視化(全過程の録画)の実現など、さらなる制度改革を目ざしていくことを決意する。
 また、われわれは、憲法の保障に由来する被疑者国選制度の意義、捜査段階の弁護人の役割の重要性を改めて認識し、個々の弁護士・弁護人において、被疑者を不必要な身体拘束や外部交通制限から解放したり、違法不当な取調べにより不本意な供述証拠を作出されないために諸権利の行使を説明、助言したりする被疑者弁護活動を、一層充実させ、質的向上を図っていくべく努力していくことを決意する。
 各弁護士会は、個々の弁護士・弁護人の被疑者弁護活動の充実、質的向上のための研修等の取組みを一層強化していくことを決意する。

以上のとおり、宣言する。


        2012(平成24)年10月19日


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