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全ての刑事事件における全面的証拠開示を求める決議

証拠開示請求権は、被告人の有する基本的な権利であり、かつ、刑事手続の公正さを保障するためにも必要不可欠である。

また、日本も批准している国際人権自由権規約14条3項は、捜査機関が収集した防御に必要な証拠の全ての開示を受ける権利を保障しており、国際人権(自由権)規約委員会は、1998年11月5日、日本政府に対し、弁護側に全面的な証拠開示請求権を保障することを勧告している。憲法98条は、条約及び確立された国際法規の誠実な遵守を定めているのであるから、日本政府は、直ちに被告人及び弁護人に対し、全面的な証拠開示請求権を保障すべきである。

ところで、わが国における刑事訴訟法は、もともと証拠開示に関する規定を欠いていたが、2004年5月に改正された刑事訴訟法により、公判前整理手続に付された刑事事件については、被告人及び弁護人に、検察官に対する類型証拠及び主張関連証拠についての証拠開示請求権が認められ、証拠開示の範囲は一定程度広がった。しかし、証拠の存否、類型証拠該当性、主張との関連性をめぐって、検察官と弁護人との間でしばしば争いが生じ、弁護人が開示を希望する証拠全てが開示されるわけではない。また、捜査機関が保有する証拠全てについての証拠開示請求権は認められていない。さらに、公判前整理手続に付されていない刑事事件については、従前どおり、裁判所の訴訟指揮権の行使による証拠開示が認められているに過ぎない。

一方、2010年の厚生労働省元局長無罪事件は、捜査機関による証拠隠しが、現在においても、現実に起きていること、類型証拠、主張関連証拠の開示請求権が認められるだけでは冤罪防止が困難であることを明らかにした。

中部弁護士会連合会の管内においても、2004年の刑事訴訟法改正以前の事件ではあるが、氷見事件、福井女子中学生殺人事件において、被告人に有利な証拠が隠されていたことが明らかとなっている。特に、氷見事件では、真犯人の供述によって、捜査機関が被告人の無罪を示唆する証拠を隠していたことが発覚したという経緯であった。

かかる事件に鑑みるなら、被告人及び弁護人に全面的証拠開示請求権を保障することの重要性は明らかである。

このような現状を改革し、刑事手続における実質的当事者対等の理念を実現することを通じて、冤罪を根絶するために、捜査機関が入手した証拠の全面的な証拠開示の規定を早急に制定すべきである。

よって、当連合会は、国に対し、次のことを求める。

被告人及び弁護人に、捜査機関が入手した全ての証拠についての証拠開示請求権を認める規定を制定すること。

以上のとおり、決議する。


        2011(平成23)年10月21日


中部弁護士会連合会



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