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取調べの可視化即時実施と誤判の原因究明機関設置を求める決議

わが国では、死刑判決が確定した免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件について、再審無罪判決がなされた。国家が無実の者に誤って幾度も死刑判決を下した歴史がある。 近年も、志布志事件のように誤起訴のため、無実の者が長期間の公判審理を受けざるを得なかったり、氷見事件や足利事件などのように誤判により無実の者が有罪判決を受け服役を余儀なくされた後、再審でようやく無罪判決を受けるという事態が後を絶たない。誤判(誤起訴を含む。)は、決して過去の問題ではない。

誤判が相次いでいるのは、決して偶然の結果などではなく、わが国の刑事司法に誤判を生み出してしまう制度的・構造的な問題点があるためである。

とりわけ、上記誤判事件のほとんどで、無実の者が捜査機関による密室での取調べで虚偽の自白に追い込まれているが、これが誤判の主要な原因であることは周知の事実である。 誤判は、無実の者から身体の自由や時間を奪い、多大な苦痛を与え、償いようのない人権侵害をもたらす。国には、誤判による人権侵害を防止する責務がある。



昨年8月の政権交代以降、政府内で取調べの可視化(全過程の録画)に向けた検討が進められてきたが、法務省は、全事件、全過程の取調べを録画することは現実的でないとの理由で、録画する事件や取調べの範囲を限定する方向で、来年6月以降まで検討を継続する方針を明らかにした。

しかし、部分的に録画するだけでは、録画されていない場面での取調官の違法不当な言動が隠され、自白場面だけが強調されて、かえって誤判を生み出す危険がある。全過程を録画しなければ、取調べの可視化ではない。

なお、可視化する事件は、当初は一定の範囲から始め、その後段階的に拡大していくことがありうるとしても、少なくとも捜査機関が現在一部のみの録画を行っている裁判員裁判対象事件については、実施を先送りする合理的理由は存在せず、立法を待たず、直ちに全過程の録画を試行を含め実施すべきである。



また、わが国では、一部の誤判事件につき警察庁や最高検察庁において内部調査・検討がなされたに止まり、中立公正な第三者機関が、誤判事件につき徹底した調査を行い、それに基づいて誤判の制度的・構造的な根本原因を究明し、再発防止のために刑事司法制度の改革を提言するといった取組みがなされたことはない。誤判を防止するためには、このような中立公正な機関による徹底的な誤判原因の調査とこれに基づく提言が、是非とも必要である。

よって、当連合会は、国に対し、誤判の再発防止と原因究明のため、次のことを求める。



  • 1  虚偽自白を抑制し誤判を防止するためには、取調べの可視化−全過程の録画−が必要不可欠であり、速やかにそのための刑事訴訟法の改正等を行うこと。また、少なくとも裁判員裁判対象事件については、試行を含め直ちに取調べの可視化−全過程の録画−を実施すること。
  • 2  誤判原因究明のための中立公正な第三者機関を設置し、同機関に相当な調査権限を付与し、過去の誤判事件の調査に当たらせ、誤判を引き起こした根本原因・誤判の要因となった刑事司法制度の構造的な問題点を究明させた上、真に誤判防止につながる刑事司法制度の改革を提言させること。


以上のとおり、決議します。

        2010(平成22)年10月15日


中部弁護士会連合会



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