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真の取調べの可視化を求める声明

足利事件で無期懲役が確定し、再審請求中の菅家利和さん(62歳)が、本年6月4日、千葉刑務所から17年ぶりに釈放された。東京高裁が実施したDNAの再鑑定の結果、事件当時のDNA鑑定に証明力がないことが判り、刑の執行停止が指揮されたためである。そして、東京高裁は、6月23日、再審開始を決定した。当連合会は、長年に亘ってえん罪に苦しんできた菅家利和さんの名誉回復を希望するとともに、えん罪が生じた原因の徹底的な検証を捜査機関や裁判所に対し強く求めるものである。


ところで、足利事件においても看過されてならないことは、捜査段階で自白強要の取調べが行われ、そこで得られた自白の任意性・信用性が裁判所によって漫然肯定され続けてきたことである。


足利事件は、平成2年に起きた事件であるが、密室での違法不当な取調べとその結果得られた虚偽の自白によるえん罪事件は、決して過去の問題ではない。最近でも志布志事件、氷見事件と枚挙にいとまがない。その度に違法不当な取調べとそれによる虚偽の自白が問題にされてきた。


この問題の根本的解決策は、「取調べの全過程の録画」すなわち真の取調べの可視化を実現することである。それゆえに、イギリス、フランス、イタリア、アメリカの多くの州、オーストラリア等の欧米諸国や、韓国、香港、台湾といったアジア諸国においても、取調べの可視化が導入されている。


ところが、我が国で現在行われている取調べの一部録画は、裁判員裁判対象事件に限られている上、取調官にとって都合の良い場面のみが録画されているに過ぎず、かえって取調べの評価を誤らせる危険がある。世界の潮流に完全に立ち後れており、取調べの「可視化」と呼ぶに値しない。


また、5月から開始された裁判員裁判においては、わかりやすい証拠提出、迅速な審理が求められ、裁判員の負担を軽減することが必要とされているが、それには、取調べ全過程の録画を基に、問題となった取調べの状況が迅速かつ的確に立証されることが不可欠である。


当連合会は、2004(平成16)年度、2006(平成18)年度、2008(平成20)年度の大会決議において、真の取調べの可視化の実現を繰り返し求めてきているが、改めて、国会に対し、真の取調べの可視化(取調べの全過程の録画)を義務づける法制度の整備を強く求める。また、これとともに、裁判所に対し、「取調べの一部録画」のみでは自白の任意性・信用性を肯定しない厳格な運用を確立されるよう強く求めるものである。

        2009(平成21)年6月26日


中部弁護士会連合会
理事長 入 谷 正 章




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