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真の取調べの可視化(取調べ全過程の録画・録音)の実現を求める決議

鹿児島選挙違反事件(志布志事件)や富山強姦事件(富山・氷見事件)などから明らかなとおり、捜査機関が、密室の取調室内で暴行、脅迫、著しい誘導などの違法手段を用い、それにより虚偽の自白調書等を作成し、それら自白調書等を有力な証拠として訴追する冤罪事件が後を絶たない。

取調べが可視化されていない現在の刑事裁判では、自白調書の任意性・信用性に関する証拠調べは、取調担当官と被告人の公判供述により取調べ状況を再現してなされるが、水掛け論に終わりやすく、心証形成を極めて困難なものとし、裁判長期化の原因にもなってきた。かかる現状を変えるためには、取調べの全過程を録画・録音し、取調べ過程を客観的に検証できるようにする必要がある。

とりわけ、7ヶ月後に施行が迫った裁判員裁判では、裁判員に対して分かり易い証拠調べを行う必要がある上、現在のように、法廷で長時間の尋問等を行うことは好ましくない。 取調べの可視化(取調べ全過程の録画・録音)は急務である。

これに対し、捜査機関は、裁判員裁判対象事件に限り、かつ、自白事件について、自白内容を確認する部分のみを録音・録画する、取調べ過程の一部の録音・録画を試行しているが、録画・録音していない場面における密室内での違法な取調べの弊害は全く解消されないばかりか、自白確認場面のみを録音・録画しそれのみを取調べることは、自白に至るまでの過程で捜査機関により違法な取調べがなされても、それがなかったかのような印象を与えかねず、かえって、自白の任意性・信用性判断を誤らせ、誤判・冤罪を生み出す危険性がある。かかる取調べ過程の一部のみの録音・録画は、到底「取調べの可視化」と呼ぶに値しない。

捜査機関は、2008(平成20)年に入り、取調べ適正化のために監督制度などを設けるに至っているが、同一組織内でのことで、自白獲得を目指す捜査が優先され実効的な監督がなされないおそれが極めて大きい。客観的な監視・監督の可能な取調べの可視化(取調べ全過程の録画・録音)が必要なことに何ら変わりはない。

2008(平成20)年6月4日、参議院において、被疑者取調べに際し被疑者供述・取調べ状況すべての映像・音声を記録媒体に記録するよう捜査機関に義務付け、これに違反して作成された被告人の供述調書の証拠能力を否定し、真に取調べ可視化を実現させる法案が可決されるに至ったが、同法案は衆議院で審議未了廃案となり、現在に至るも、真の取調べの可視化(取調べ全過程の録画・録音)は実現していない。

よって、当連合会は、改めて、国会に対し、被疑者取調べに際し被疑者供述・取調べ状況すべての映像・音声を記録媒体に記録するよう捜査機関に義務付け、これに違反して作成された被告人の供述調書の証拠能力を否定する刑事訴訟法の一部改正法を成立させ、真に取調べの可視化(取調べ全過程の録画・録音)を実現させるよう求めるとともに、裁判所に対しては、取調べ全過程を録画・録音したDVDなど客観的資料がない限り、その供述調書の任意性、特信性、信用性を肯定しない厳格な運用を確立させるよう求めるものである。

 以上、決議する。



2008(平成20)年10月17日
中部弁護士会連合会



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