中部弁護士会連合会

中弁連からのお知らせ

高齢者や障がいのある人を消費者被害から守り、
安心して生活できる社会を実現するための宣言

ひとり暮らしの高齢者世帯や高齢者夫婦だけの世帯が増加しています。また、ノーマライゼーションの考え方の広がりや施設から地域への移行を根幹とする政策の推進に伴い、地域で暮らす障がいのある人も増加しています。このような中で、地域で暮らす高齢者や障がいのある人を狙った悪質商法による消費者被害も増加しています。

高齢者や障がいのある人が安心して「地域で暮らす権利」は、2005年日本弁護士連合会人権擁護大会決議によって確認されたように、憲法13条(個人の尊厳・自己決定権)、14条(平等権)、22条(居住の自由)、25条(生存権)及び国際人権規約をはじめとする国際条約が要請する基本的な人権です。高齢者や障がいのある人が、地域で安心して暮らしていくためには、これらの人が、その生活の基盤となる財産を違法・不当に奪われることのないよう、悪質な業者による消費者被害から守る体制を整備する必要があります。

介護保険法上、認知症高齢者等の相談機関として地域包括支援センターが、障害者自立支援法上、相談支援事業として障がいのある人のための相談機関が創設されましたが、予算上の制約もあって人員は不足し、未だ十分に機能しているとは言えません。各地の消費生活センターも、その組織整備はいまだ不十分で、消費者相談窓口の設置すらされていない市町村も存在します。これら各関係機関の機能がそれぞれに充実し、互いのネットワ−クが構築されない限り、高齢者や障がいのある人が安心して地域で暮らす権利は名ばかりのものになりかねません。

また、高齢者や障がいのある人は自ら被害回復を図りにくく、泣き寝入りしやすい傾向にあります。その被害の拡大を防止するためには、行政が適切に行政指導や行政処分をなしたり、消費者団体が差止権を行使することが必要であり、違法収益を事業者に吐き出させ被害者の損害の回復をはかる制度を実現することも必要です。

以上をふまえ、当連合会は、高齢者や障がいのある人が安心して地域で暮らす権利を有することを改めて確認すると共に、これらの人が消費者被害から守られ安心して生活できる社会を実現するために、国及び地方自治体に対し、以下の施策を求めます。


    国及び地方自治体は、高齢者・障がいのある人の消費者被害の予防・早期発見・救済のために、地域包括支援センター等の福祉関係機関及び消費生活センター等の地方の消費者行政機関の権限をそれぞれに充実させ、関係諸機関の連携を図り、これに必要な財源上の措置をとること。

    国は、消費者の視点に立った消費者庁を創設し、悪質商法により違法な収益を得た事業者から収益を吐き出させて被害者の被害回復を図る権限を消費者庁や消費者団体に与えること。

    地方自治体は、高齢者・障がいのある人が繰り返し被害にあわないようにするため、経済的事情により成年後見制度を利用することが困難な人に対する財源上の措置を拡充するとともに、成年後見制度の首長申立を積極的に行うこと。

当連合会は、高齢者・障がいのある人の消費者被害の予防と救済のために、地域包括支援センターなどの福祉関係機関や消費生活センターなどの消費者行政機関と密接に連携し、消費者被害の予防と救済のための相談体制を整備することを決意し、ここに宣言します。



2008(平成20)年10月17日
中部弁護士会連合会



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