中部弁護士会連合会

中弁連からのお知らせ

改めて国選弁護人報酬等の大幅増額を請求する決議

現在、刑事裁判事件が増加傾向の中、国選弁護事件の比率は増加を続け、今や被告人段階での刑事弁護の8割近くが国選弁護人によって担われている。

2005(平成17)年11月には、改正刑事訴訟法による公判前整理手続等が実施に移され、翌年4月から、検察庁が裁判員裁判対象事件について全件公判前整理手続に付するよう、裁判所に意見具申するようになったことから、同手続に付される事件数も急増している。これにより弁護人は新たな手続の下、事件処理に多大な困難と負担を強いられている。

さらに2009(平成21)年5月までには、裁判員裁判が実施され、これまでとは全く異なる公判弁護活動が弁護人に要求されることになるし、その上、同月までには、被疑者国選弁護制度の適用範囲が法定合議事件等から必要的弁護事件へと大幅に拡大される。

このように、国選弁護事件は、今後、被疑者段階・被告人段階を問わず、質的にも量的にも飛躍的に変化・拡大し、われわれ弁護士に、さらなる格段の負担を強いることが見込まれる。

憲法が保障する弁護人依頼権には、被疑者・被告人が国選弁護人から実質的な援助を受けることも含め保障されており、同弁護人が実質的援助をなすに必要十分な報酬等が支払われるよう、国は財政的措置を講ずる義務を負っていると解せられる。そして、弁護士の報酬には、事務所を維持するに必要な経費も考慮されるべきであるという事情にも照らせば、国選弁護人に支払われるべき報酬額は起訴前の被疑者弁護については20万円以上、起訴後の被告人弁護については標準的な自白事件において20万円以上であるべきである。また、弁護活動に必要な記録謄写費用、交通費、通信費、通訳料、翻訳料等の実費全額が、別途、弁護人に対し支給されるべきである。

ところが、2006(平成18)年10月より業務を開始した日本司法支援センターの国選弁護人報酬等の算定基準では、国選弁護人の報酬額は、上記の最低限支払われるべき報酬額に到底満たず、実費も、謄写料や交通費の一部が支払われるにすぎない。上記算定基準では、大多数の被告人国選弁護事件で支払われる報酬額等が、従前より明らかに低額化している。

このような状態が続くようでは、2009(平成21)年5月に向けて、国選弁護が質的にも量的にも飛躍的に変化・拡大し、われわれ弁護士への格段の負担増が求められている状況下で、国選弁護活動の質を維持しつつ、十分な国選弁護対応態勢を確保することなど到底できない。

当連合会は、改正刑事訴訟法施行に先立つ2005(平成17)年10月21日、政府(法務・財務当局)及び国会に対し、妥当な報酬額と弁護活動に要した実費全額とを国選弁護人に支払うための予算措置をとるよう要望し、その実現のために、専門的見識に基づき検討する有識者による審議会を設置し、速やかな増額措置をとるよう求める旨、決議した。しかし、その後も予算増額措置はとられておらず、妥当な国選弁護人報酬額を検討する動きも政府内に見られないようである。

よって、当連合会は、改めて、日本司法支援センターに対しては国選弁護人の事務に関する契約約款第16条所定の報酬及び費用の算定基準を、上述の最低限の国選弁護人報酬額と実費全額とを国選弁護人に支払う内容に変更して法務大臣の認可を受けるよう、政府(法務・財務当局)及び国会に対しては、かかる算定基準の変更を実施できるような財政的措置を講ずるよう、それぞれ要望すると共に、日本司法支援センター及び政府(法務・財務当局)に対し、そのような算定基準の変更や財政的措置を実現するために、適切・妥当な国選弁護人報酬額を専門的見識に基づき検討する、有識者による審議会等を設置するよう改めて強く求める次第である。

 以上、決議する。



2007(平成19)年10月19日
中部弁護士会連合会



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