中部弁護士会連合会

中弁連からのお知らせ

取調べの可視化の実現を求める決議

現在の刑事裁判は、相変わらず捜査段階に作成された自白調書等の供述調書に強く依存しており、密室の長時間に及ぶ無理な取調べにより作成された虚偽の自白調書等により少なからず冤罪事件が生み出されている。しかも、現在の裁判においては、自白調書の任意性・信用性が問題となった場合に、法廷において取調担当官と被告人のそれぞれが証言、供述により取調状況を延々と再現するという方法をとらざるを得ないが、法廷での取調状況の再現は往々にして水掛け論に終わり、自白の任意性・信用性の判断は極めて困難であり、裁判の長期化の原因にもなってきた。このような現状を変えるためには、取調べの全過程を録画・録音し、取調過程を客観的に検証できるようにする必要がある。このことは、被疑者の取調過程だけでなく、参考人の取調過程についても同様に言えることである。

とりわけ、2009(平成21)年5月までに実施される裁判員裁判においては、裁判員に対して分かり易い裁判を行う必要があるうえ、現在のように、自白調書の任意性・信用性、あるいは参考人調書の特信性、信用性が問題となったときに、延々と取調担当官の尋問と被告人質問、参考人尋問を行うことは現実的ではない。この点からも、取調べの可視化は急務である。

このような中、2006(平成18)年5月9日、法務大臣会見において、裁判員対象事件の一部に関し、検察官による被疑者の取調べの録音・録画を試行することになったとの発表があり、最高検察庁の次長コメントも発表された。

しかし、上記検察庁の方針は、取調べの過程のうちどの部分を可視化するかが検察官の裁量に任されていること、警察での取調べについては対象となっていないこと、試行地域として東京が中心となると伝えられていることなど、極めて不十分なものである。

当連合会は、2004(平成16)年10月、被疑者取調べの全過程を録画・録音する制度を確立し、遅くとも裁判員制度の実施までにこれを整備することを強く求めるとともに、その実現のため全力を挙げて取り組んでいく旨決議した。しかし、まだその目標は達成しえていない。

そこで、当連合会は、国に対し、改めて、全地域における全事件について、被疑者、参考人を問わず、全取調過程の適正な方法による録画・録音を実現することを求める。

また、裁判所に対し、新刑事訴訟規則第198条の4の趣旨を踏まえ、全取調過程の録画・録音等客観的資料がない限り、その供述調書の任意性、特信性、信用性を肯定しない運用を確立することを求める。

 以上、決議する。 



2006(平成18)年10月20日
中部弁護士会連合会



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