中部弁護士会連合会

中弁連からのお知らせ

自然環境政策に対する実効的な住民参加の実現に向けた提言(宣言)

自然は、人間を含めあらゆる生命をはぐくむ母胎であり、限りない恩恵を与えるものであるが、近年に至るまで自然は開発の対象であり、開発こそが国民経済にかなうものとされ、多くの自然が住民の意見を取り入れることなく開発によって失われていった。

1992年、リオデジャネイロで開催された国連環境開発会議において、「環境と開発に関するリオ宣言」が採択され、「持続可能な開発(発展)」が唱われ、生態系の保全など自然のキャパシティ内での自然環境の利用や世代間の衡平が希求されるようになった。わが国においても開発重視の政策が反省され、「持続可能な開発(発展)」の理念が盛り込まれた環境基本法等の法律が制定され、政策方針となる生物多様性国家戦略も策定された。

このように「持続可能な開発(発展)」は理念としては受け入れられつつあるが、現実の施策に充分に反映されているとは言い難い。その原因の一つに施策に対する住民参加が保障されていないことが挙げられる。自然環境に配慮した施策を実現するためには、自然環境に対して関心を持ち、自然を身近な存在としてとらえる住民やNGOのきめ細かな意見が施策に反映される必要がある。住民参加の規定は、意見書提出、公聴会開催、審議会への諮問等がいくつかの個別の法令により規定されているが、実際には形骸化したものが多く、施策に住民意見が反映されることは極めて少ない。最近の河川法(1997年)、土地改良法(2001年)、自然公園法(2002年)などの改正に際して盛り込まれた住民からの意見聴取の新設や、協働を意識した規定も、未だ不十分なものに止まっている。

また、多岐にわたる自然環境に関わる施策の全般について住民参加を実現するためには、個別の法改正などと並行して、環境基本法において住民参加を制度として保障する規定を盛り込むべきである。

そして、実質的な住民参加の保障の内容としては、一旦計画が動き出すとそれを止めることは困難であることを考慮して、高次の計画策定段階を含め政策決定段階の早期の時点から住民参加を保障するべきである。さらに、これまで住民に意見の提出が認められていた場合にも、その意見が施策に反映される保障は全くなかったことに鑑み、例えば事業者に住民からの意見に対する応答義務を課すなど、実りある住民参加を実現していくべきである。

他方、自然環境に影響を与える施策は、地方の実情に応じた計画の策定が求められる。したがって、地方公共団体は地方の実情に応じた独自性のある条例を制定したり、住民参加の機会を草の根から保障していくことが求められる。

よって、当連合会は国及び地方公共団体に対し、自然環境の保全に向けた実効的な住民参加を実現すべく以下の提言を行う。

  1. 国は、環境基本法に政策決定段階での住民参加を保障する規定をもうけるとともに、これが形骸化することがないよう少なくとも住民意見に対する応答義務、住民からの環境政策に対する発議権、環境情報に対するアクセス権などの具体的規定を盛り込むよう改正すること。

  2. 地方公共団体は、地域の実情に応じた自然環境政策の実現のために、法令上の制度の運用において住民参加の機会を保障すべく、条例の制定その他の創意工夫ある施策を図っていくこと。

2005(平成17)年10月21日
中部弁護士会連合会



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